日本の花火の特色

「わぁ、きれい!」これが花火の感動の原点であり、楽しみの全てといっても過言ではないでしょう。
 ご存じのように花火は火薬で作られています。現在ではその殆どは化学合成による化学薬品です。花火は夜空で化合物の燃焼が行われているものです。ところがもし花火が、火薬の燃焼つまり化学現象によって生まれる単純な爆発音や閃光だけのものなら、最初はびっくりしても、人の心に感動を残すことは無かったでしょう。花火が人を感動させるのは、音や光の強さだけでなく、「美しさ」を同時にもっていたからです。美の追求に花火師が没頭してきた結果、日本の花火は比類無き「美しさ」を手にしました。火薬が燃焼するだけの化学反応から芸術になったのです。
 日本の花火は世界一精巧で華麗です。それは幾多の花火師たちが精魂を込めて、文字通り命を懸けて伝えてきた伝統技術だからです。
 日本の菊花型割物花火(きくかがたわりものはなび)の特色は次の3点になります。
1. まんまるく(球形に)、大きく空に色とりどりの花を拡げる。
2. 花弁のひとつひとつの色が変わる。
3. ひとつの円でなく花の芯のように二重三重の円(同心球)を描く。


3ddanmen.gif1.まんまるく球形に開く のは日本の菊花型花火が図のような構造に(割物・芯入り菊の代表的な例)なっており、しかも完成した花火玉が最初からボールのような球体であることによります。それぞれのパーツについて簡単に説明しましょう。
注・星の色はわかりやすくするために彩色してありますが、本来は黒または銀色がほとんどです。赤色の光を出して燃えるといっても火薬が赤い色をしているわけではありません。この星の色については「色」の項目をご覧ください。
    
 
玉殻   玉皮、花火のパーツを収める容器です。昔は新聞紙や和紙を貼り重ねて花火業者自身が制作しました。現在では量産する玉はボール紙をプレスしたものを使います。
  開いたときに光の花弁となる花火の主要な構成部品です。出来上がったときの玉の大きさによって、入れる星の直径も変わってきます。上図のような「芯もの」と呼ばれる複数の同心球に開く割物では、一つの玉に込める星の大きさも各層毎に違っています。この場合、内側の星は外側のものより直径が小さい場合が普通です。
     「みち」または親導(おやみち)と呼び、導火線のことです。打ち上がった瞬間に着火し、一定時間燃焼後に花火玉の中心の割火薬に火を伝達します。上空で玉がちょうど良い位置で開くまでのタイムスイッチの役目になるわけです。これも玉の大きさによって長さと燃焼時間が違います。
割薬   (わりやく)。割火薬(わりかやく)、破弾薬(はだんやく)ともいいます。玉皮を壊し、星に点火して四方に飛ばす役割をします。
上貼紙   装填を終えた花火玉はまだ完成品ではありません。玉皮の外側にさらに幾重にも上貼り(玉貼り)をして強度を出します。花火が十分に大きく開くためには、この玉皮の強度と割薬の爆発力のバランスも大切で、玉貼りと乾燥も重要な作業です。 
間断紙   (はさみがみ)。星と割火薬が直接接しないように遮断します。古来より和紙が最良のパーツとして使用され、現在でも競技用の玉や、出来上がりにこだわる花火師の間では和紙や雁皮紙(がんぴし)を超える紙はないとして支持されています。
竜頭   (りゅうず)吊り環。ここにロープを通して吊り下げ、筒に装填します。
    
 大きく空に色とりどりの花を拡げる
 ために欠かせないのは割火薬と、玉皮の強度とのバランスですが、とくに瞬間的にかつ均等に玉皮を割るためには、割火薬の工夫に眼を向けなければなりません。
 割火薬は粉末ではなく、主に綿の実などに黒色火薬をまぶしたもので、割火薬の部分の重量を軽くすることにも貢献しています。一粒ずつはひまわりの種ほどの比較的大きな粒になっています。これを装填するとそれぞれの粒の間に適度に隙間ができます。この隙間ができることでどこか一部に着火したときに瞬時に全体に火がまわり、割るための力が偏ることなく均等に星を飛ばすことができるわけです。
 もしこれが粉末の黒色火薬であれば、着火しないか、または星を破壊するほどの爆発になってしまいます。
    
2. 花弁のつまり星の一つ一つの色が変わる 
のは、基本的に日本の星が丸く(球形)、違った色を出す火薬が中心に向かって何層にも重なっているからです。外側から中心に向かって燃焼し、順次色が変わっていくのです。これについては「色」や「星についてもっと知りたい」の項目を参照して下さい。

3. 日本の花火師たちの無限の工夫の結果が、一重でなく、二重、三重の同心球構造を持つ芯物花火を生み出しました。

 二重を「芯物・芯入り」三重を「八重芯(やえしん)」、四重は「三重芯(みえしん)」といいます(写真右・三重芯の菊、中央より、銀、紅、青、引き紅光露の四重構造になっている)。八重芯の完成で日本の煙火製造の技巧は頂点に達したともいわれます。同心球の中心が一点で揃うような完全な芯物花火の製作は難しく、高い技術力が求められます。日本の花火の最高技能は7号以上の八重芯物が打ち上げられた時にこそ鑑賞できるといえます。残念ながらそれは日本のどんな花火大会(一般的な納涼花火大会)でも簡単に見られるというものではありません。

yaemie.gif 八重芯・三重芯では概ね図のような構造になっており、上図の芯入りの模式図をさらに複雑にした時計のように精緻な造りになっています。こうした割物の中でもとりわけ手の込んだ逸品は競技花火大会などで多く目にすることができます。

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