電気点火、コンピュータによるコントロールの時代へ

tutu.gif 花火大会はひとつのショーと考えられ、近年は花火大会もエンターテイメントを考えないわけにはいかなくなっています。ひとつひとつの玉の美しさもさることながら、その打上げる緩急や、多い少ない、シングルかワイドか、などを組み合わせ、リズムとテンポ、変化を求め続けなければならないようです。音と光と煙の作り出す一大ページェントの花火大会は、演劇や映画各種イベント同様に工夫された演出がカギになってきています(写真はスターマインのセッティングの例。数百の筒と玉を用意して決まった順番に打ち上げる)。

tenka.gif 花火を打ち上げる、というと花火職人さんが、打ち上げ筒の側で点火しているというイメージがあります。確かに全国的にみればまだそうした直接点火が多いとはいえます。
 現在から将来へは離れた安全な場所から配電盤(スイッチ盤)を操作して、花火に点火する遠隔点火方式が主流となってきています。すでに人間が筒につきっきりで点火をしていた打ち上げ作業は、これら電気による点火に確実に変わりつつあるといえます。それは時代の流れもさることながら、なににもまして「安全」が優先されることにあります。実際、筒の側での点火作業は危険と隣り合わせといえます。打ち上げ中に相応の点火のための人員を打ち上げ場所の各所に配置しなければならないとき、当然、危険度もまた増すことになるからです。
 さらに、離れた場所からの電気点火は、より複雑な演出を可能にしました。一つ一つの玉をのんびり鑑賞していた時代は、スピーディでより多くの玉を次々に打ち上げるように変化しています。
 スイッチひとつでの完全な点火のシンクロは、とくにワイドスターマインなどの一斉打ち上げでは不可欠な手段といえます。数十メートルも離れた何セットもの花火の足並みをそろえて一斉に同時点火するのは、暗闇で合図を交わしながら人手によって行うのは難しいものです。さらに電気点火はコンピュータによる点火タイミングのコントロールが用意なため、さらに緻密な演出や音楽との完全なシンクロも導入されはじめています。実際のところ、音楽にシンクロさせて非常にスピーディな打ち上げのタイミングを点火と開花の時間差を計算しながらコントロールするのは人の手(アナログ)によっては不可能といえます。コンピュータにより複雑にタイミングをコントロールした打ち上げは、近年の花火大会に新しいプログラムを加味したといえます。
 日本で花火用として、電気点火方式と必要な各機器と消耗品が用いられ始めたのは1980年代半ばから後のことです。電気点火のルーツは、映画の爆破や弾着シーン、特撮用などに火薬を用いる特殊効果用花火の電気着火方式や、建設工事の発破用の電気点火にあり、30余年程度の歴史があるといわれます。それらを花火用に流用したり、改良しながら今日に至っています。
 欧米では日本以上の安全意識と、花火がイベントやセレモニーでの演出された打ち上げを中心に発達してきたという経緯もあって、早くから電気点火が取り入れられています。少なくとも商業目的での花火の演出は完全に電気点火で行われているようです。電気や、最近では無線による点火をするための機器類や、音楽とのシンクロを考慮した打ち上げ専用のコンピュータ点火器も豊富ですし、現在は様々な点火機器が輸入されています。
 電気点火は同時に煙火業者の負担も増してしまったことも事実です。まず基本的な装備投資が増えます。通電によって着火するパーツ(点火玉という)や配線コードの一部は使いきりの消耗部品ですし、打ち上げ前に全ての筒に花火をセットして配線(写真右・各筒からの配線)するため、用意する筒の数が増えました。早打ちや単発などの従来のやり方では一つの筒からたくさんの玉を詰め替えながら打ったからです。しかしそれでも電気点火の流れは主要な花火大会を中心に、安全と演出を柱として主要な煙火業者を中心に日本でも着実に進むことでしょう。また、有能な煙火業者にとっては表現や演出の幅をさらに拡げる手段となりましょう。
(この項終わり)

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