最先端花火撮影テクニック
(デジタルカメラ完全対応)
How to take a Fireworks Photography

こちらでは普通のスチルカメラ(デジタル一眼レフカメラ、銀塩=フイルム一眼レフカメラ)を使用した花火撮影の方法を解説します。
各自のレベルに合わせて選んでください。現在開いているこのページはデジタルカメラ初級編です。フィルムカメラで撮りたい人は 
こちら。

初級編=デジタルカメラビギナズークラス。現在ご覧になっているページ。デジタルカメラで花火撮影を始めたい方に。
初級編=銀塩カメラビギナズークラス。銀塩カメラ=フィルムカメラで花火撮影を始めたい方に。
失敗編=フェイルセイフクラス。花火撮影で起こりがちな様々な失敗例と原因と対策。
花火写真のFAQ花火撮影についてよく質問されるQ&A。
花火写真家・小野里公成の機材とカメラバッグの中身=筆者自身はこんなものを使っています。コラムとして花火野郎御用達、観覧/撮影、これがスグレモノ=筆者愛用の便利用品紹介。
花火撮影テクニック−初級編

2017.Ver15
制作・著作 小野里公成/FIREWORKS PHOTO LIBRARY 
禁・無断転載、流用、引用


はじめに−花火写真の楽しみ
 
 夏の夜空を彩る美しい花火の数々。ひとときの余韻とともに一瞬にして消え去る美を、写真マニアならずとも写しとめたいと思うのは、花火好きならば誰もが考えることに違いありません。しかしながらなにかしら特殊な撮影技術が必要なのでは?…と思っている方が多いのではないでしょうか。ご心配なく。実は打ち上げ花火の撮影は難しいものではありません。
 その証拠に各地の花火大会では老若男女、実に多くの写真愛好家が思い思いに撮影を楽しんでいる姿をみかけることでしょう。写真には数多くのジャンルがありますが、その中でも花火写真はあまり難しい撮影テクニックを必要としない部類だと思います。それでも撮りはじめてみると、奥深いものがあるといえるかもしれません。基礎となる撮影方法自体はとても簡単なのですが、より良い花火写真を求めて独自の撮影方法を工夫して実行している人がほとんどです。撮影技術や露光データ以外の花火そのものの知識や花火を鑑賞する心も重要といえましょう。
 基本的には以下のような機材と撮影方法で、誰にでも美しい花火写真を撮りはじめることができます。このレッスンでは一般論としての花火撮影方法をお教えする、というよりも、「花火写真家である私はこうやっている」「こう考えている」と書き進めています。ですから、ビギナーの方はまずこのとおりに、撮り馴れている方はこれは使える、というポイントだけを参考にする、という読み方でよいでしょう。それでは花火撮影を楽しんでみて下さい。

構成
レッスン1 撮影に必要な機材
レッスン2  撮影前の準備
レッスン3  撮影方法 基本編
レッスン4  撮影方法 応用編 おわりに

レッスン1 撮影に必要な機材
 私が通常撮っているような花火の写真、たとえばこの「日本の花火」の各ページやギャラリーを飾っているような写真ですが、それらは従来からある花火のスタンダードな撮影方法によるものです。私はこれを「正統派」などと呼んでいますが、ようするに花火を観たままに撮影する写真です。実際は観たままに花火を画面内に入れた写真も様々に分けることができますし、写真に写る姿は完全に「見たまま」というわけではありません。しかしながらこの初級編ではこうした種類分けよりも、とにかくまず「花火をどうやって写すのか?」について順に説明していきたいと思います。
 それでは最初に必要な機材からみていきましょう。正統的な花火の撮影では、特殊なカメラや機材を使うことはありません。皆さんが通常使っている一眼レフタイプのデジタルカメラが主役になります。
   
撮影関係で必要なもの
  
カメラ
   
 一眼レフカメラが一般的です。センサーサイズ(フルサイズとかAPS-Cとか)はどれでも構いません。
 花火撮影に不可欠な機能はバルブ撮影です。これが可能なマニュアル撮影モードが付いているカメラが必要です。バルブとはシャッターボタンを押している間シャッターが開き、指を放すとシャッターが閉じる。といった機能です(大部分のコンパクトデジタルカメラにはバルブ機能が無いので注意)。
 一般の撮影ではこのバルブ(Bまたはbulbと表示される・写真参照)モードを使うことはあまり頻繁ではありません。夜景などを長時間露光で写すときに使うくらいでしょう。ところが花火撮影ではこのバルブ(B)モードが撮影の主体で、逆に普通の何100分の1秒という高速シャッターはほとんど使いません。ここがポートレートや風景など他の撮影ジャンルと大きく違う点です。ですから各人の使用するカメラにこの機能・モードが備わっているかを取扱説明書などで確認して下さい。
 一眼レフタイプのカメラであれば高級機から実売5〜20万クラスの普及機までバルブモードを搭載しているはずです。現在は電子ビューファインダー搭載のレンジファインダー式デジタルカメラでもバルブモードを搭載しています。もし搭載していなければ擬似的に1秒以上の長時間のシャッター速度を選んで使うことになります。この場合露光開始はともかく終了時はカメラ任せになるので、ある程度自由な撮影は制限されます。
 被写体へのピント合わせは、マニュアルフォーカス(ピント合わせが手動式)であることも最低条件です。ピント合わせ、撮影モード設定、レンズ側の切換スイッチなどをすべて「マニュアルモード=M、マニュアルフォーカス=MF」に設定してください。バルブ露出時にはかなり電池を消耗する機種もあります。カメラ本体のバッテリーの充分な充電や予備バッテリーを忘れないようにしましょう。
  
三脚
     
 普通に花火を写すには一般的に三脚は不可欠です。三脚無しの花火撮影は考えられません。
 それはなぜでしょう。一般に花火の写真というと、花火玉に内包された星が燃えながら飛び散っていくその「光跡」を撮影したものといえます。そしてその光の線となって写る「光跡」をいかに綺麗にとらえるか?という点が重要になってきます。風景写真など他のジャンルでも作品の質を落とす要素である「ブレ」と「ボケ」ですが、花火の写真においても星の「光跡」がブレて波うっているものはほぼ失敗の部類に入ります。
 一般の百分の一秒単位の撮影に比べれば、花火を露光している時間は相当長いといえるでしょう。その間、花火が開いて消える間、カメラをブラさず固定させるためにも三脚は不可欠の機材といえるわけです。
 三脚といってもその種類や大きさ(伸張時の高さ)によって色々あります。花火のために選ぶなら、携行性を考えて重すぎる必要はありませんが、できるだけガッチリとした背の高いものを使いたいところです。選ぶときのポイントは各部のストッパーを締めて立てたときにガタつきやネジレが無いことです。また自分が使用しているカメラを支えるのに充分な強度の三脚を選びましょう。このあたりはカメラ店などで相談されるとよいでしょう。
 また、三脚の脚を伸ばすだけで、撮影者が立ったときの顔の位置にカメラがくる位の高さになるものが理想です。脚の短い軽量三脚の雲台が付いている中央エレベーター部を、最上部まで伸ばして高さを稼ぐ方がいますが、不安定なのでおすすめできません。やむなく背の低い三脚を使う場合は腰を下ろして撮影できる体勢や場所を確保するとよいでしょう。
 最近利用者の多い、カーボン製などの高級軽量三脚の場合は、素材としては丈夫ですが軽すぎる長所が逆に欠点でもあります。撮影中はカメラや三脚の足に、手や肘が当たったりしがちです。それがブレを呼ぶのですが、軽い三脚ではよりそうしたショックに弱いわけです。別売のストーンバッグなどを併用して、カメラを乗せた三脚全体が軽くて動きやすい点を補うこともひとつの方法です。製品によってはストーンバッグが標準で付属しているカーボン三脚もあります。
  
リモートコントローラー
   
 カメラ、三脚にリモコンケーブルを加えた3つが花火写真を撮る上で最低限必要で、絶対に欠かせない3点セットです。バルブ露光で一秒以上の長時間露光になる花火写真ではブレなどの問題から、カメラボディのシャッターボタンを指で押し続けることなど考えられないからです。ケーブルの長さは色々ありますがですが50センチくらいまでが使いやすいでしょう。各カメラメーカーの機種ごとに設定された別売りの純正オプションやサードパーティのリモコンケーブルを使用します(写真)。レリーズボタンが押したまま固定できるタイプが絶対的に使いやすいと思います。私は有線のリモコンを使いますが、ワイヤレスのリモコンも自由度が高いのでお好みで選ぶとよいでしょう。
 コンパクトデジタルカメラの中にはリモコンを接続する部分やコネクタ自体が付いていない、つまり遠隔操作でシャッターを切ることを最初から考えていないカメラもあるので注意してください。そうした場合は三脚に装着した上で、やむなく直にカメラ本体のシャッターを押すことになります。
 カメラ、三脚、リモコンの3点はいずれが欠けても、まともな花火写真は撮れないと考えてください。撮影をしようというのですからカメラや三脚、ましてやメディアを持たない方はいないと思いますが、リモコンケーブルは意外に見落としがちなので注意してください。ただし記念写真などのスナップの場合は、必ずしもリモコンが必要なわけではありません。
                    
レンズ −焦点距離の記載はセンサーがフルサイズの一眼デジタルカメラ相当です(以下同)。 
 ズームレンズが理想的です。もちろん単焦点レンズの方が光学的に優れていることは確かです。すでに花火撮影をたくさん経験されている方には、特にズームでなければならない、というおすすめではありません。
 ズームレンズは入門用には非常に大きなアドバンテージが備わっています。
 まず携帯するレンズが少なくてすむこと、次に一方的に打ち上がる花火に合わせて、柔軟に適切な画角を与えられる点がその大きな理由となります。花火撮影では、一度決めた撮影場所を打ち上げ中に変えることはまず不可能です。それは主にたいへん混雑しているからですが、無段階に画角を変化できるズームが撮影場所を変えられない点を、ある程度カバーしてくれるわけです。また連続する打ち上げではレンズ交換の手間が無い、ということも利点だと思います。
 地上の風景と花火を組み合わせる場合ならズームの焦点距離範囲は28〜85ミリあれば(花火との距離によりますが)ほとんどの花火大会でその一本で間に合うでしょう。撮影距離によってはこれに24ミリレンズをプラス、または24〜85などのズーム。花火を単発でしかもアップで撮りたいならさらに100ミリ以上の望遠または望遠ズーム(35〜135、70〜200など)を用意してください。あるいはこれらを包括する24〜120などの守備範囲が広いズームであればたいていの花火撮影がこなせます。また最近はワイドスターマインなど打ち上げの幅的規模が大きい大会も増えています。同時に花火との間合いに制約があり、至近距離から大がかりな打ち上げを撮る機会もたたあります。そうした場合、更に16〜20ミリなどの超広角も必要になってくるといえるでしょう。
 これに対し受光素子がAPS-Cサイズのデジタルカメラではフルサイズ用のレンズを使ったときにはレンズの焦点距離表記が変わる事にだけ注意して下さい。これは受光素子が35ミリフイルムのひとコマより面積が小さいためで、たとえば1.6倍掛けの機種では、銀塩で35〜70mmズームは56〜112mm相当になります。とくに花火撮影で多用する広角側が影響されますので、お手持ちのデジタル一眼レフカメラの説明書を参照して良く把握して置いて下さい。
   
ISO感度設定   
 昨今の花火は全般に相当に明るく、その撮影にはISO400や800など高感度設定は必要としません。一般的なISO50〜100程度で十分です。
 デジタルカメラの露光感度も、ISO100に設定するのが基本です。ISO100のままでも良いですがNDフィルター2番を常用すると露出コントロールがしやすくなります。NDフィルターというのは、色合いはそのままにレンズに入る光の量を落とす働きをするフィルターです。カメラによってはISO感度を自動で上げる機能も付いていますが、画質に影響するのでおすすめではありません。最低感度が200程度になる機種ではNDフィルター4番で光量を落として使います。なぜフィルターの必要があるかといえば、感度がISO100より無駄に高いことで、もし明るい花火が来たときに絞り値が深い側(f値で22以上など)で絞るだけの余裕が無くなってしまうからです。つまり一番絞りきっても明るすぎてオーバーになってしまうことがあるわけです。あらかじめ光量を抑えることで、絞り込む側に余裕を持たせるわけです。
 現在は通常の撮影ではプログラムAEなどのおかげで、写真の知識がない人でも絞りやシャッター速度を意識しなくても写真を撮ることができます。花火撮影の場合は全ての操作をマニュアルで撮影するので、こうした感度の認識と絞りをコントロールする、という意識は必要です。

メディアはどれくらいの容量を用意すれば「安心」か
   
 ひとつの花火大会にどれくらいのカット数が必要かは、その花火大会の規模や撮影者の撮り方の個人差にもより、一概には特定できません。目安としては1時間の開催時間、5000発程度の大きな大会で、相当多くても200〜400カットくらいでしょう。もちろん撮り方の個人差もあるので万が一のために余裕があれば安心です。
 余るくらいなら何も問題はないですが、花火大会後半、もっとも良い花火が集中して打ち上がっている時のメディア切れ、バッファ放出は、ほとんどヤケ酒フテ寝ものです。
 デジタルカメラの場合は、2000万画素前後程度の機種で、最高画質、最大サイズにしてRAWとJPEGで同時に撮ったとしても32GB程度あれば余裕過ぎるくらいだと思います。200〜400カットを目安に各人の機種と必要な画質モード、記録方式に応じた容量のメディアを予備を含めて用意しておけば良いでしょう。撮影中に時間的に余裕があればプログラムの合間等に、液晶モニターで撮影済みのカットをチェックしてみましょう。あきらかな失敗カットなどはその場で即座に消去して(メモリーをクリアー)残りの撮影可能カット数を確保しておくことも大切です。

その他必要なもの(写真・機材パッキング例・拡大化)

懐中電灯      
 必携品。撮影中に設定の確認やレンズ面の状態チェック、プログラムを読んだり片付けるときにも欠かせない存在です。撮影中は小型のLEDライトやペンライト程度で良いでしょう。またヘッドランプも両手が使えるので便利です。撮影用とは別に光量のある懐中電灯を持っていると終了後の片づけや忘れ物チェック、帰り道を照らすなどの用途に重宝します。いずれにせよ予備を含め数種用意していると便利です。
  
予備バッテリー、予備のリモコン 
    
 最近の電子化されたカメラでは、バッテリーがなくなればいっさいがまったく動作しなくなるので、予備バッテリーを携帯していれば安心です。とくにデジタルカメラでは不可欠で、近年のデジタル一眼では、フル充電のバッテリーひとつで花火大会2回くらいは余裕で撮れてしまいますが、万一のトラブルにも備えて予備のバッテリーもフル充電で用意しておきましょう。もちろん泊まりがけでいくつもの花火大会を撮影する場合は充電器も携行する必要があります。リモコンは撮影中もっとも力がかかり、稼働回数の多い道具です。野外の撮影なので経年変化による接触不良も起きますが、握力や指の力が一気にかかるのでかなりの確率でぶち壊します。デジタルカメラに使うリモコンは手に持って頻繁に動かすので、カールコードやコネクタ部の電気的な断線も起こりうるのでそうした破損に備えてできれば2〜3本予備を用意したいところです。
   
外付けのストロボ      
 撮影意図によっては必要。たとえば画面手前に浴衣の見物人や季節の花などをあしらい、花火と組み合わせる場合などです。花火を露光中、または別々に対象物にストロボを発光させます。当然ながらカメラの内蔵ストロボではなく、外付けのストロボのことです。こうした前景を抽出するには現在はLEDの懐中電灯が多く用いられます。
   
遮蔽紙       
 古典的な道具で私が提唱する最先端の花火撮影では殆ど出番がありませんが、バルブ露光中に片手に持ってシャッターがわりに使うこともあります(レッスン3参照)。ボール紙、段ボール、黒い下敷き、帽子、黒っぽい布、あるいはレンズキャップなど人によって様々な物を使います。
   
レンズクリーニング道具一式(レンズクリーニングペーパー、ブロワーブラシ、レンズクリーニング溶液)
      
 撮影中でもブロワーブラシなどは使用頻度が高いものです。人の多い野外なので土埃や花火の燃えカスなどで意外とレンズは汚れてしまいます。また、気温が低い、あるいは降雨後など湿気が高い時のレンズ面の結露による曇りにも注意したい点です。撮影中でも相当こまめにレンズ面が汚れていないかチェックしましょう。その際にレンズにむやみに息がかからないようにします。気温変化や湿気などにより曇りを生じているときはレンズクリーニングペーパーなどで繰り返し丁寧に拭い去ります。
   
花火大会のプログラム

 たいていは大会本部などで手に入りますが、小規模な花火大会では最初から存在しないこともあります。現在はその花火大会の公式ホームページなどで予め閲覧、またはダウンロードできる場合も多くなっています。有料・無料いずれの場合も登場する花火内容や花火大会全体の流れを知り、次を予測して余裕を持って写すためにも最先端の花火撮影では不可欠なアイテムです。花火写真は行き当たりばったりで撮るのではなく、次を知った上での「待ち」の撮影術なのです。もちろん花火撮影を何度も経験されている方なら、こうした予備知識無く撮影に望み、「次にどうなるかわからない」スリルを味わってみるのもおすすめです。
   
あると便利なもの

傘/雨具、レジャーシート、シート固定用ペグ、携帯椅子、双眼鏡、筆記用具、虫避けスプレー、洗濯バサミ(プログラム誌を固定)、ガムテープ/ビニールテープ、細紐(長さ適宜5〜10メートル)など 
酒(酒?)
レッスン2へ続く
花火写真家・小野里公成の機材とカメラバッグの中身
 一般論でなく、そういうオマエは何を使っているんだ?何を持っていくの?にお応えする仰天企画。私の撮影機材と常時携帯の品はこのような物です。
 おおっなんと意外に質素なラインナップです。きっと皆様の中にはより立派な道具をお持ちの方ばかりいることでしょう。
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