花火野郎の観覧日記2022
観覧日記その9 9/17
第35回 利根川大花火大会 4大花火師夢の共演
茨城県・猿島郡境町
有料席全体の様子
バルーン照明が点きっぱなしの有料席中央
銘花尺玉5発より
株式会社山崎煙火製造所
銘花尺玉5発より
株式会社山崎煙火製造所
ミュージック・スターマイン
青と白のキセキ
株式会社山崎煙火製造所
銘花尺玉5発より
株式会社マルゴー
銘花尺玉5発より
株式会社マルゴー
ミュージック・スターマイン
Cosmos
株式会社マルゴー
銘花尺玉5発より
野村花火工業株式会社
銘花尺玉5発より
野村花火工業株式会社
ミュージック・スターマイン
情熱の炎
野村花火工業株式会社
ミュージック・スターマイン
情熱の炎
野村花火工業株式会社
銘花尺玉5発より
株式会社紅屋青木煙火店
銘花尺玉5発より
株式会社紅屋青木煙火店
ミュージック・スターマイン
Concerto
株式会社紅屋青木煙火店
台風14号の歩みが遅いようで、雨予報が外れて観覧できそうだった。それでもいつ崩れるかわからないのでそれなりに用意はしておく。
早朝から晴天で、気温も相当高かった。朝っぱらから会場近くの道の駅でクラフトビールやらを流し込み、長い待ち時間の開始だった。
その道の駅さかいには、花火愛好家も次々に到着し、しばし歓談で有意義な待ち時間となった。そしてどんどん人と車が増え始め、花火ではない土日に何度か買い物や食事に来たことがあるがこんな混雑しているのは初めてだ。
観覧はいちおう有料席をゲットしたのでそこからと考えた。もちろん風向きによって対岸の観覧場所も検討済みだったがこの日の予報では利根川に沿って南南東方向から吹く風で、表も裏も横風イーブンだった。それならメイン側と決めていた。有料席の入場は16時からなので機材運びもそれから。だらだらと道の駅周辺で時間を潰す。
午ごろから既に境大橋の境町向けの道路はほとんど車が動かない状態になっていた。なんでも幸手市の権現堂のあたりから渋滞していたとかいうが、夕方には有料席から橋の上の動かない車を見て「これは開始時間にたどり着けない客が大勢いるのでは」と感じた。電車組で来場した知り合いも、動かない路線バスを境大橋の手前のバス停で降りて、徒歩で橋を渡ったと言っていた。それでもバスより早く着いたらしい。有料席のカメラ席背後は堤防に沿って国道354号だが、これがもう夕刻からは上下線ともまったく動かない大渋滞になっていた。おそらく花火開催時間中ほとんど動かない車の中だと思う。カメラ席も開始が迫ってもところどころ歯抜けで、たどり着けないのだと理解した。あらかじめ開催要項に、周辺渋滞で路線バスやシャトルバスの遅延が生じる旨が記載されているものの、あまりにとんでもない。
その高額さゆえに、発売開始から物議を醸し、町民枠だ一般枠だとネット上でもさんざん論議され話題になった有料席チケットだが、運良くカメラ席を買えた私の場合、結局チケットをスタッフの誰かに提示することは一度もなかった。拍子抜けだ。映画館で黙って自分の番号の席に着くように、そうしただけだ。そも当日の花火会場の修羅場でいちいちそんなチェックなどできない。なにせ有料席は16時入場と、その時間に一気になだれ込むのだからゲートでひとりずつチェックなど無理である。
会場に無料観覧場所はありません、という主催者の触れ込みだったが、実質は有料区画以外全部無料席、という状態。有料区画に向かう時も、かつて撮影したことのある無料区画では既に場所取りされびっしりと観覧客が陣取っている状態。私のお席も背後の人一人くらいの通路の向こう側は鈴なりの一般客。
この大会で4大花火師共演が他に類を見ない仕様となった。それは4社のうち株式会社マルゴーが先の「大曲の花火」において内閣総理大臣杯を獲得したことにより、4業者全てが大曲と土浦の2大競技会の両方で内閣総理大臣杯を授与された煙火業者になったからだ。ただ、間違えないで欲しいのは、内閣総理大臣杯を授与された煙火店が等しく高い独自性や技能や、オリジナリティをその後絶えず保ち続けているわけでは無い、ということ。内閣総理大臣杯が今現在の煙火店の技能を示すバロメーターでは無いということだ。そもそも内閣総理大臣杯を審査するそれ自体が競技会によっては相当怪しいのだから。
定刻には無事にスタートしたがプログラム構成のバランスがどうもなー。4大花火師共演というが、地元の山崎煙火製造所の枠が他と比べて破格に多いのだ。わざわざ大会告知宣伝ポスターは4社別々、なんと4種類も作ったのだ。これだけ費用をかけた宣伝にそう謳えば4つの業者が同じだけ打ち上げるように見えるが違う。これでは物量的にも他の3社がゲスト扱いではないか。他の3業者を見たくても、まずは開始から後半まで半分以上の時間をさんざん山崎煙火の打ち上げを見るのを乗り越えなければならないのが正直しんどかった。山崎煙火が花火的に問題があるとは言わないが、これでは一業者がやっている田舎の納涼大会と同じで、そればかりでは飽きる。ということ。これは当の山崎煙火にもマイナスなのでは?同じことを今後もやるなら、他の3業者をもっと全体に分散させ、フィナーレ以外は同じ物量で公平にしないと。
私の位置は会場全体の向かって右のかなり端っこだった。ちょうど正面近くに来賓席があった。端っこでも斜めハスから見るのが好みなのでまぁいいかと思っていた。しかしワイドで打ち始めると、斜めハスどころかなんかまさかのど真ん中?という感じだった。それは予想外で、カメラは2台で縦最大24ミリと横16ミリの撮り分けなのだが、16ミリは天地が厳しいほど接近戦だった。来賓のお客様最優先の配置なのか有料席全体の端っこが真正面てどういう筒場レイアウトなんだか。のちに聞けば筒場の境大橋寄り(向かって左方向)は千葉県エリアに入るらしく、打ち上げ場がまたがると許認可とか色々面倒なので領域を越えないで配置したら寄ってしまったらしい。
今回、新潟から業者(阿部煙火工業株式会社)を呼んで4大煙火店に加えて20号5発が目玉プログラムに加わった。プログラムでは窓口になった地元煙火店の名称がかわりに記載されていて二尺玉の業者名は無いのでこの新潟業者には気の毒。そして20号の設置場所が問題。花火に向かって遥か右方向のカメラ席区画からでも約800〜1000メートルも離れているので残念ながら迫力も何もない。発射も開花の音もまるで衝撃が感じられなかった。勿体ない費用だこと。私の位置からは20号は湾曲している堤防が引っかかって、カメラを向けても厳しいので最初から撮らなかった。しかも20号発射位置の手前のこちらの河川敷にトイレ用のバルーン照明が2機どどんと鎮座していて美的にダメだった。用意された5発のうち、最初の3発は玉名とともに単独で打ち上げられたが、残り2発はどちらも最終プログラムの山崎煙火のミュージックワイドの中で本体ワイドと同時に打ち上げられた。
プログラム冊子上では、最後の山崎煙火のブログラムスタートが19時43分。これが約15分間の壮大なミージックワイドであることから、終了は19時58分と20時くらいになるはずだった。しかし実際は20時40分頃の終了と大幅に時間オーバーした。これが煙待ちとかトラブルとかの要因ならともかくプログラム間の無駄に長い空き時間があるためだ。その間は何かといえば迷子の呼び出しや、警察からの渋滞警告だのコロナでマスクを付けましょうを執拗に繰り返しだらだらと間延びした進行になったことによる。
遅延が何に影響するかと言えば間違いなく帰りの足だ。歩いて帰れる地元町民は良いが、今回大々的に4大花火師共演を謳い、全国から花火ファンを集客したわけだが、この脆弱なインフラの開催地で終了がだだ遅れとなっては、帰宅難民が出るではないか。土浦をも超える大会を目指しているらしいが、町民向けだけにやっていた小規模な納涼花火大会の時と運営側の意識が変わっていないのだ。
とにかくだらだらした進行のせいで、いわば「興が醒める」という気分になる。観客の興奮や感動のテンションが落ちないように最後まで持っていくべきなのに、何度も何度も中断されて慣れた私でも、「早く進めてくれ」と白けて疲れた。警察からの要請と言ったって、もう渋滞してびくともしない車列に対してどうかしろと、会場でアナウンスしてスムースに道が流れるのかよ。迷子で呆れたのは同じ子が繰り返し呼びだされる。親は面倒だから花火が終わってから引き取りに行けばいいとでも考えているのか。
興醒めの気分ながら打ち始めれば野村、マルゴー、青木は流石に魅せてくれた。同じ地元の野村花火は違うが、マルゴーと青木煙火は、何度も打ち上げられた山崎に比すれば10号5発とスターマインの打ち上げはただ一回のみなのだ。それでも目が覚めるような内容だったのは見事という他ない。
近場の住人の私は良いが、これほどずるずると時間が延びては東京都内の宿にさえ帰り着けるかどうか心配する観覧客もいただろう。終了後は有料席は一番奥なので車に戻るのに相当かかると覚悟していたが。交通規制解除前になんとか終了させたおかげで通行止めにした国道354号を歩けたので思ったより早く車にたどり着けた。私が店じまいして駐車場を出たのが21時15分。これで積み込んでから道の駅のトイレに行ったりしている。駐車場からは10秒で脱出。国道4号バイパスまでは過去にも詰まっていたのでそこまでの渋滞は仕方ないがトロトロは動いている状態。通常2〜30分で帰り着ける距離をほぼ1時間かかって帰宅。その道道も諦めて徒歩で帰る客が大勢いた。最寄りのバス停にも多くのバス待ち客がいたけれど、路線バスがいつやってくるかわからない有様。途中の幸手市通過の時も、一体どこで観覧していたのか浴衣姿の何組もの客が徒歩で帰宅中だった。
写真撮影者として呆れ果て、かつ一般観覧客に対しても今時の花火大会でこれはないだろう、と思ったのは、有料のメイン観覧場所で露天商ではなく「さかい河岸商店会」による出店を設けたのだが、ここでの買い物客のためか、何機ものバルーン照明を高々と延ばして、開始前から開催終了までそれを点けっ放しにしていたこと。開始前にこれは消さないのでは?と嫌な予感がしたが果たしてそのままだった。周りの客は眩しくて花火に集中できないし、なによりこのバルーン照明列の背後には15,000円也のカメラマン席の列があるのだ。カメラマン席は全部で150区画だが、花火に向かって左半分後半の約70区画近くが、このバルーン照明列の真後ろになっていたのだ。有料カメラ席なのにこれは酷い。堤防道路上の仮設照明は開始直前に消灯したが、商店会ならびのそれはそのままだった。最大の高さまで延ばしたバルーンが目の前で(8台か?)点きっ放し。この状況で写真を撮れと?他にも来賓席や向かって右奥のトイレ群にもバルーン照明が点きっ放しだった。私も離れた来賓席のバルーンの影響を免れなかったが、すぐ目の前にある区画に比べればマシだった。私がこのバルーンの背後区画だったら放棄しただろう。後日、この左半分のカメラ席からの撮影写真をネットで見る機会があって、その画像は思っていた通り、画面下部に2つのバルーン照明が写り込んでいた。アマチュアの写真愛好家たちは、仕方なくあてがわれた区画でそのまま撮ったのだろう。花火は素晴らしかっただけに気の毒でとても悲しかった。
とにかくここは有名花火師を呼び寄せたり、他の花火大会の目玉プログラムを拝借したりする前に、花火大会運営の基本を学ばなければ。まずは遅滞なくスムースに進行することに努めなければならない。プログラムにそう記載したら、事故やトラブル以外では時間通りに進めてほしい。
内閣総理杯授与業者を集め、地域外から集客したい、有名な花火大会にしたいようだが、この地は鉄路がないこと、交通インフラが脆弱なことは規模や観覧客数を拡大しての開催は難しい状況と言える。許認可の問題をクリアしないと打ち上げ場所を拡大できないし、この開催地に見合った規模と観客数の大会を模索した方が良いのではないだろうか。どこの大会もこうした諸々の条件を考慮してその制約の中で工夫してきたのだから。大会に発展願望があるなら有名花火師に金を払う以前に、インフラ整備に先行投資するべきだし役場、観光協会のメインのスタッフは他の手本にする花火大会を多く視察してノウハウを学ぶべきと考える。
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