花火野郎の観覧日記2020

観覧日記その4 10/4
THE 絶景花火プロローグ

静岡県・裾野市

  
 2020年。壮絶なコロナ禍にあって、n万人規模の観客を集客する花火大会や祭りイベントは軒並み自粛に追い込まれている。日本の花火存亡の危機という最中、クラウドファンディングを利用して花火打ち上げが各地で企画された。出資者を募り、その方々だけに花火を見せる、というものだ。そして今回出資して参加した企画が「the絶景花火」だ。霊峰富士の麓で芸術協会の4大煙火店(有限会社菊屋小幡花火店、株式会社斎木煙火本店、株式会社紅屋青木煙火店、株式会社磯谷煙火店)による珠玉の花火を堪能できる、というもの。対象は色々あるがそも私はクラウドファンディングなるものに参加というか金を出したことがない。しかし花火観覧が出資の対象ならいうなれば有料観覧、やってみようか。幸いなことにこの企画は目標額以上の金額を集めてサクセスした。花火規模も少し拡大し、4大煙火店の10号20玉に加えてそれぞれのワイドスターマインなどが加わった。
 今回はプレ大会、プロローグ大会と称し、観覧は出資者のみということになっているが、「the絶景花火」という企画自体はひとつの花火大会として今後も同所で永続させていきたい考えのようだ。翌年2021には本番大会としてさらに規模を拡大し、一般観覧(有料)が可能な大会になる予定だ。もちろんそれまでにコロナが収束するか規制が緩和され、一万人以上の規模のイベントが自由に開催できる、という条件も必要だ。
 出資者に直前に連絡された会場は、富士山2合目、標高1,200メートルにある「PICA富士ぐりんぱ」という遊園地とキャンプ場が合体した場所だ。出資額によるが観覧場所への入場や駐車場の確保はリターンの特典になっている。クラウドファンディングに関係なく開催日にちょうどキャンプしていた人たちは運良く花火も楽しめるということだ。
 場所的には御殿場から北上するのが近いが、東名高速は遠回りなので、中央自動車道河口湖IC経由で南下するルート。しかし圏央道を使うと金がかかり、片道で5000円ほどだ。現地には思ったより早く2時間半ほどで昼頃到着。この日は朝から曇り空。開催地の予報も終日曇り。雲の底が高ければいいのだが。晴れていれば河口湖あたりでどどんと富士山が見えるのだが、まったく姿が拝めない。現地に近づけば少しはましかと思ったが、これは今日は富士山の眺望とこの企画の売りである「富士山と花火のコラボレーション」は期待ゼロだな。
 キャンプ場は閉鎖されたゴルフ場跡地の一部を使って営業されている。グーグルの空撮を見れば北側にはゴルフコースが展開しているのがわかる。このキャンプ場は自由にテントを張ってのキャンプよりは、コテージやテントとテーブルが予め用意されたタイプが多く、手ぶらでしかも泊まる場所の脇に車で乗り付けるだけでキャンプが体験できるという風になっている。食事は自前の食材でも施設が用意してくれるものもチョイスできる。コテージはエアコンも付いていて快適そうだ。しかし歩きでうろつくには傾斜がきつい。もっともこの傾斜地では、駐車場からキャンプ道具を徒歩で運んでサイトに設営など考えられない。
 指定観覧場所は、こうしたキャンプ場にも使われていない旧ゴルフコースの一部。富士の裾野ということで全ての施設はなだらかな斜面の一部にある。一番奥つまり一番標高の高いキャンプ場のさらに奥に観覧場所がある。地形的にそこまではずっと上り坂。入場はコロナ対策もあって、チケットに記載された整理番号順に入る、という形。今回は出資者が全員観覧場所に入れるわけではなく、金額に応じたリターン内容にそれが盛り込まれている出資者だけで総数は約300名。
 メイン観覧会場は花火に向かって横に細長く、左端は小山になっていたが立ち入り禁止。前方は6〜70メートル先ですぐ林(コース同士を仕切るような林?)で打ち上げ空間下方の視界が悪く見える。ザラ星や斜め打ちなどはバッサリか。そして問題は打ち上げ列に対しそうとう近いということ。
 10号は三箇所で打つが、一番近い10号筒まで300メートル程度だからかなり接近戦だ。成田のカメラ席とか、秩父の南小学校とかそれくらい。間合いだけでなく特徴としては観覧場所と打ち上げ場所の高さが違い、さらにどちらも向かって左上がり右下がりの斜めになっていること。実際の打ち上げにどう影響したかというと、最初から斜めだから開花に高低差ができる。打ち上げ列の方が高い位置にあるから、前方視界が多少悪くてもそれを超えて打ち上がる。そして平地より高低差分だけ開花位置が高い。
  

霧立ち込める夕方の観覧場所より
正面が打ち上げ領域

メイン観覧場所の様子
前方には切れ目なく立木

万葉花
磯谷煙火店

絶景富士〜Hokusai Blue〜
紅屋青木煙火店

絶景富士〜Hokusai Blue〜
紅屋青木煙火店

昇分花付天竺牡丹
菊屋小幡花火店

虹色のグラデーション
斎木煙火本店

錦先満花
紅屋青木煙火店

彩虹輝
斎木煙火本店

スノークリスタル
磯谷煙火店

昇尾花付万葉芯秋の彩り
菊屋小幡花火店

未来花
紅屋青木煙火店

花火を愛する人たちへ
〜霊峰富士と織りなす神秘の光〜
磯谷煙火店

花火を愛する人たちへ
〜霊峰富士と織りなす神秘の光〜
磯谷煙火店

花火を愛する人たちへ
〜霊峰富士と織りなす神秘の光〜
磯谷煙火店

里山の忘れ柿
菊屋小幡花火店

昇小花付四重芯変化菊
菊屋小幡花火店

ミラーボール
磯谷煙火店

昇曲付四重芯変化菊
磯谷煙火店
    
 今回は出資者であると同時に運営から特別に許可を得て(右写真)、花火の安全距離外なら観覧できる場所が広い。メイン観覧場所の他に立入れるところを開始前にまずは空身でくまなくロケハンした。メインではどうしても近いので引いた場所も探ったがメイン会場のすぐ後ろには送電線が渡っていて、つまり引きの絵を狙うとこの送電線が開花を横切る。引いた場合は標高も下がるから必ず見上げで送電線が絡む。
 ようやく観覧ポイントを定めたが、私の撮影場所からは晴れていれば林の陰で富士山が見えない角度。それは実際見えない気象条件だからの選択。もちろん開催地を知ってからは、富士山と花火とをどうからめようかとか、構図とか、色々考えた。しかし開催地は行ったことも無い場所でストリートビューの写真も少ない。そこからどのように、どれくらいの大きさで富士山が見えるのかわからない。全ては現地で実物を見て考えようと思ったのに肝心の対象物が視界に無いのだからお話にならない。この場所だけではなく富士山ライブカメラを見る限り360度、どこからも見えないようだった。そんな天気だから花火に富士山という一番のこだわりポイントをあっさり捨てざるを得なかった。もし快晴であるなら、メイン観覧場所は花火列に対してややハスであるものの、花火の背後に富士山が見えるはずで、位置関係がよく計算されている。またハスになっていることで若干幅の画角的には優しいかも知れない。
 すでに知り合いの愛好家が候補地に居たが、あたりをロケハンするとメイン会場以上に花火に近かった。もっとも近い打ち上げ場所は300メートルを切っている。まさかこんな接近戦とは、と考えもせず超広角レンズを持ってこなかった。私は流石にこの「すぐそこ」感が恐ろしく、かつ対応したレンズも無いので知り合いの居る最前線ラインより5〜60メートル下がった位置。
 その後車に戻り、観覧場所までの長い坂を30分以上かけて何度も何度も休んで息を整えながら機材をカートで上げた。カメラザックにしようかと考えたがカート引きに。背負っていても同じだけきついに違いない。登山だよ登山。もっと若い時でも休まずに上げるのは無理だろうな。
 標高も合間ってかつ日差しも無いので流石に冷える。到着時、車から降りてすぐフリースのジャケットを羽織ったくらい。本番ではダウンに使い捨てカイロにと冬仕様で待機。
 夕方16時前後から、打ち上げ場所の背後の森の上部が霞み始めた。雲が沸いているのか霧が流れているのか。私は山ヤの経験から悪い予感がした。知り合いの愛好家にも現地で霧に包まれちゃうかもと予告していた。
 客の入ったメイン観覧場所の様子を見に行くとクラウドファンディングのリターン内容の関係で写真撮影やビデオ録画の参加者がほとんどだった。そして一様に前方の立木の見切りから視界を確保すると一番後ろに下がった位置しかありえず、ほとんど横一直線に並んでいた。
 撮影場所に戻ると、もう背後の木々だけでなく、打ち上げ列前の木々も霞んで見えなくなっており、悪化していた。これで花火設置列は霧に包まれたわけで、もちろん上空開花域もだ。次第に背後からも脇からもガスが湧き、流れ始めて、あたりはすっかり霞んでいった。え?この条件でやるの?霧か雲か、濃く薄く変化はあるものの晴れる気配はなかった。風向きからか背後つまり下の方から這い上がってくる感じ。背後の送電線の高い鉄塔も見えなくなり、視界は50メートル程度。なにせ50メートル先にいる知り合いの三脚やテントが霞んでいるくらいだ。立てておいた三脚はもうしっとりと濡れている。
 苦労して運んだ三脚2本だが、この濃霧傾向にカメラは1台だけにした。無駄だ。下手をすればワンカットも撮れないかもしれない。近くを現場に向かう小幡氏と斎木氏が通りかかったので言葉をかわす。花火師さんたちもこの天候に「(好転を)と祈ってください」と告げて現場に向かった。
 本番の15分程度前から、序章の花火として4号から10号まで計18発をゆっくり上げた。この時はまだ若干霞みながらもなんとか見えた。射出位置と開花位置の確認。
 そして本番。スタートは斎木煙火本店によるオープニングワイド「初光」だが、星筋と開花位置はなんとか見えるものの、何の玉を打っているのかまったくわからないほどの視界。もったいなかった。当然撮影もできず見ているだけ。続く10号単発も見えず。
 打ち始めてみれば50メートル程度下がったのは誤差の範囲くらいにとんでもなく近くて高かった。平地の河川敷の花火などと比較すると想像以上に開花位置が高い。通常の到達高度に標高差がプラスされているからで、10号など頭上高く聳える感触。この最初の最大幅の3箇所打ちを見たあと、急いでさらに50メートル以上下がったのだがそんなものでは対抗できないほどだった。この位置でメイン観覧場所の三脚列と間合いが同等くらいか。持って来て無いけど楽に撮るなら14ミリ以下。
 続く青木煙火。コロナ関連の医療従事者への感謝と激励花火として「絶景富士〜Hokusai Blue〜」。3箇所ワイドはブルーを基調にした玉を多用して内容が良かった、もしクリアに見えていたら凄くいい光景だったと思う。
 今回一番の幸運だったのは磯谷煙火店か。「花火を愛する人たちへ〜霊峰富士と織りなす神秘の光〜」。そのスターマイン前後のわずかな時間、奇跡的にほぼクリアだった。全貌が見えた。しかしほんの10分かそこら、まさに束の間。すぐにそれまで以上に条件が悪くなり、フィナーレの規模の大きい小幡花火店によるワイドスターマイン「富嶽夢景」ではこの間合いで星の一粒さえ見えない夢ならぬ最悪に濃密な霧の中だった。壮烈な発射音だけが響き渡り、霧がかすかに色づく程度の有様に、心底煙火店さんが気の毒だと思った。傾斜設営地では今回の350メートル幅でも煙火店さんは登ったり下ったりでかなり難儀だったと思う。それだけに結果の見えない気象は無念だろう。
 物量から考えて花火だけどんどん打つと20分も持たない、ということから打ち上げ本番では時間延ばしの花火の解説とかアナウンスが相当長かったように感じた。実際は1時間近くかけたのだからどれほど話が長かったことか。条件が良ければそれもいいかも知れないが、もっと臨機応変にしてほしかった。視界の良いタイミングで一気に打てば、ラストの小幡ももう少し見えたかも知れない。
 2021年の本番大会へ向け、設置では最大700メートルワイドも可能、玉は20号まで可能、ということになっているが、それだけのワイドを快適に見られる観覧場所は今回の位置ではどうだろうか。それと出資者観覧場所は今回最大500名収容でやったが、視界を考えるとそれ以上入れられるのかどうか。
 コロナ禍にあって、花火大会そのものが無いし、私は自ら情報を集めてのシークレットだのサプライズだのの打ち上げは一切見ていない。だからコロナ前までのように同好の士、愛好家の皆さんと会う機会もなかった。残念にして不運な観覧だったが、到着時、指定駐車場に入れると、すでに早々と現着した知り合いの愛好家(もちろん全員正規の出資者)があちこちに。私にとってはその多くが例年以上に久しぶりの再会、そして歓談できたのはなにより嬉しかった。
 帰路は下りだから楽。車では来た道を戻るのだが、御殿場に下れば問題なかったろうが富士山スカイラインは、ぐりんぱからだと標高を上げる道のり。走り始めてすぐに濃霧の中の走行になった。夜間でしかも濃霧。街路灯なし。こんな経験全く無い。視界は50メートルもない。フォグランプとヘッドライトに照らされる道はどこが道でカーブなのかわからないほど。時速30キロ程度で道を探りながらモタモタ走るしか無い。恐ろしい。
 なんとか須走から有料道路を経て中央道へ。しかしこの日は日曜の晩というに、談合坂近辺で激しく渋滞に巻き込まれ1時間ほど多くかかってようやく帰宅。
    

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