花火野郎の観覧日記2018

観覧日記その21 10/6
第87回 土浦全国花火競技花火大会

  
茨城県・土浦市


昇曲導付四重芯変化菊
宮城県 有限会社若松煙火製造所

創造花火・霞ヶ浦に咲く菊華美人
東京都 株式会社ホソヤエンタープライズ

創造花火・深海の世界
新潟県 有限会社小千谷煙火興業

スターマイン・ビンクのじゅうたん
神奈川県 株式会社ファイアート神奈川

スターマイン・ビンクのじゅうたん
神奈川県 株式会社ファイアート神奈川

スターマイン・ファンタジーロマンス
宮城県 株式会社芳賀火工

スターマイン・ファンタジーロマンス
宮城県 株式会社芳賀火工

昇曲導付四重芯変化菊
愛知県 加藤煙火株式会社

昇曲導付四重芯変化菊
群馬県 有限会社菊屋小幡花火店

スターマイン・輝く未来へ〜
茨城県 筑北火工堀込煙火店

昇小花五重芯変化菊
静岡県 株式会社イケブン

創造花火・曼珠沙華
愛知県 株式会社若松屋

スターマイン・ボルケーノ〜大地の息吹〜
福島県 有限会社糸井火工

スターマイン・バブリー&ノスタルジー
栃木県 須永花火田島煙火工場

昇曲導付三重芯引先紅緑閃光
福島県 有限会社糸井火工

昇り分砲付四重芯菊先緑紅銀乱
長野県 有限会社伊那火工堀内煙火店

創造花火・錦秋の情景
福島県 有限会社菅野煙火店
   
 プログラム中途で、打ち上げ中止。終了。数えて87回の土浦競技花火大会史上前代未聞の決定だった。
 終日曇りで夕方から晴れという予報は大きく外れた。焦がされる陽射しを浴びて車から三脚を運んだだけで、午前10時に観覧場所に現着した時点で大汗をかいていた。
 しばし既着の愛好家氏たちと歓談後、いったん車に戻り、休憩してから13時頃機材を運ぶ。その後も観覧場所の田んぼ地帯は炎天下。近隣の民家が作る日陰に避難して永い午後をしのいだ。
 空は快晴なれど台風がもたらすやや強めの南風は変わらず。定時雷の煙を相当なスピードで流す。それだけでなくその煙は真向かってくるという悪条件。私が居た有料撮影席から、多くの愛好家が風を見てそこを放棄。川の反対側、AEONのある裏手に移動して行った。AEONが出来る前は裏も一面の水田だったから見通しが良かったが、AEONそのものの建物やら送電線やら、現在はかなり制限があると思う。それでも風下よりはましというわけ。しかし強風の時の順風は、たとえば10号割り物が綺麗に見えるかというとそうでもない。盆の上部が向こう側に押し流され、変形してしまうのだ。
 快晴の夕刻を迎え、風は強めなものの予定通りに18時に競技花火は始まり、順調にプログラムは進んでいた。ときおり強風のためか、燃え殻が落ちるのに注意を促すアナウンスが何度か挟まった。
 やはり10号はほぼ風下で、盆全体がめくれ上がるように上に向かって拡がり、まるで写真では天地逆さまになったよう。曲導が写ってなければ上下逆にしたらまともに見えそう。スターマインはほぼ左からの横風だったが開花全体が大きく右方向に流される傾向。
 18時45分過ぎ、プログラム34番の菅野煙火の創造花火が終わった後、「安全確認をしています」とのアナウンスがあり、競技が中断された。10分が過ぎ、20分が過ぎ、桟敷席では時間つぶしに音楽など流されていたが、いっこうに再開の兆しがないまま時は過ぎる。菅野煙火の一部の玉がけっこう低空で開発していたので火災か何か、最初はそんな風に考えていたが本当の原因は別の場所で起きていたのだった。
 19時35分過ぎ、中断してから50分ほども経ってから、主催者より「中止」の正式アナウンスが在った。まだ1/3もプログラムが消化してない状況。私の居た田中町の見物客全体から「エエエーーーッ」と悲嘆の声が巻き起こった。
 カメラは2台出して創造花火の型物用に1台追加したわけだけれど、結局型物用は1カットも撮らずに終わった。
 中止の直接の原因は、観客の中で風に流されたとみられる花火が開発し、9〜66歳の男女10人が、いずれも軽傷とみられるが火傷や擦り傷を負った、という事故。これを引き起こした強風を中止の理由として、まさにバッサリ打ち切りとなってしまったのだ。
 桟敷席で観ていた愛好家仲間によればけっこう燃え殻が降ったらしく、中止とアナウンスされても、これでは仕方ない、との空気だったらしい。私の観覧場所ではそんな声もあったものの、私自身はまったく降灰を感じなかった。さすがに愛好家としてはここで打ち切りはやりきれない。昨今のプログラム立ての意図的な操作で、一部の実力煙火業者は大会提供の後、つまりプログラム後半から終盤に全て集中させているからだ。青木、小幡、斎木、マルゴー、加藤、野村、山崎、和火屋といった愛好家にとっての、見逃せない必見の業者の出品全てが、発射も叶わず全滅になった。野村、山崎という地元の星ですらただの1発も打たないで終わったのだからプログラム構成に問題ありといわれても仕方なく残念至極。土浦の実行委はそろそろこういう操作をやめて、満遍なくシャッフルした構成にしてはどうか。またはこうした煙火店は条件の良いプログラム序盤でさっさと打たせたらと考える。
 中止を呼んだこの事故、現場近くでスマホで録画されたツイッターやYoutubeなどに投稿された動画を見ると、起きたのはスターマイン打ち上げ場所の風下側つまり北側で学園大橋を挟んだ直ぐ脇の場所。ここは桟敷などの正規観客席でなく、堤防のり面の自由観覧場所。プログラム19番の高木煙火終盤の4号の八方咲系の玉が客のまっただ中で開いてしまっていた。悲鳴なども記録されている。
 要因となった高木煙火のスターマイン打ち上げをNHKの中継録画などで確認すると、途中で対で上げていた4号八方咲のうち曲導は2本あったものの右側(北側)が開花せず、それから約12〜3秒経ってから250メートル離れた安全距離範囲外の地上で開花している。
 このことからこの玉は正規の秒時では開かず、不発で風に流されて落ちたものの、導火の不具合などで通常より時間がかかって割薬に着火したものと考えられる。たいていは落下の衝撃などでは破裂しない。もし黒玉のままだったら開花せず被害はその時にはなかったかもしれない。しかし落ちた場所は見物人の座っている中で、客が間隔を取って座っていたことと、玉が人に直撃しなかったこと、開いた玉が星の疎らな八方咲だったことから被害がこれで済んだと考えられる。これが玉が直接当たったり、同時に上げていた星満載の牡丹系だったら、けが人の数がもっと増えていたと思う。いや、むしろ導火に不具合があったのが牡丹など丸く開く玉だったら安全区域内に落ちていただろう。今回はおそらくいくつか偶然が重なったのだ。導火に不具合が生じたのが丸く開く菊花の割物でなく、それより星が少なく全体重量がより軽い八方咲だったこと。そして強風。同じ4号でも玉重量のより軽い八方咲がより遠くに風で流された、そういうことなのだと推察する。
 その後、けがか火傷をした客が救護所に駆け込んだか、通報したか主催本部に事態が知らされるまでかなりタイムラグがあった。19番高木煙火から34番の菅野煙火の創造花火まで普通に進行していたのだ。しかし菅野煙火が打ち終わったタイミングで事態が判明し、中断、前後策協議となったと思われる。
 こうした不発玉が生じたり、多少斜めに打ち上がっても大丈夫なように安全距離が設定されている。今回安全距離を超えてこうした事故が起きたのはやはり風が大きな要因だろう。これがテーマパークのアトラクション花火なら、当日打ち上げ前に風下側の観客をあらかじめ退去するように誘導もできようが、朝早くもしくはそれ以上前から場所取りしている土浦の観客に対して「こちらは風下で危険ですから立ち退いてください」と開始直前に実行するのもこれだけ大きな花火大会では無理な話。客の側であれだけ風下で直近の場所であったら危険を察知して移動するくらいの回避行動が欲しいものだが。
 中止決定は英断と思う。この後続けたら、同じ方向に再び降灰や流れ玉が飛び込まないとも限らず、別の出品業者のスターマインでいつまた同じことが起きるか予測できない。ましてや2000発も一気にワイドで打ち上げる花火づくしなどは惨事になっていたかもしれない。つまり同条件かもっと風力が強まる恐れがある状況では止めて正解だったと思う。
 当然ながらノーコンテスト。あの2013年の全く見えない中でも強行審査した土浦だが、今回ばかりは「全ての出品者が打ってない」状態では競技不成立も止む無しではなかろうか。
 いつもの花火終了なら片付けて歓談してなんていう間にそこそこ客もはけて、すんなり車に戻れたが今回はばっさり中断で一斉に客が動くから、学園大橋を渡り返すのにバス乗車の大勢の客に巻き込まれ、5歩10歩ずつしか進まない。橋を渡るだけで40分もかかった。車は帰り方向の川向こうの農道に駐めているから仕方ない。
 帰路方向も大渋滞でナビを見ながら逆方向に走らせたらこれが正解で、迂回して帰路方向の国道に合流したあとは順調な走り。今後も同じように走ろうと思う。観覧場所を離れたのが20時。帰宅は23時。花火観覧が不完全燃焼で大いに疲れた。

    

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