花火野郎の観覧日記2017

観覧日記その6 5/19
第78回 下田黒船祭 海上花火大会

  
静岡県・下田市

 実に9年ぶりで下田港に行くことが出来た。黒船祭に伴う海上花火大会の観覧は2008年度が最期になっている。それから6年間マイカーを失っていたので長らく間が空いてしまった。私の住処からでは電車を使うと日帰りは無理で、下田で必ず泊まりになってしまうから、そのまま帰れる車は宿代もかからず便利だったわけで。かつて家族で白浜に2泊もして黒船祭込みで下田観光をしたこともあったけどバブル時代の遠い思い出。
 マイカーを取り戻してからは天候とかの条件もあったけれど、なにより花火が前夜祭として必ず金曜日という平日開催になってしまったからただそれだけで来られなかった。都内から仕事帰りというのは開始時間が遅いとはいえ距離的にも無理だった。
 そしてようやく今年再訪できた。久しぶりに車を走らせると下田はやはり遠い。気分的には熱海で半分、いや伊東で半分、と感じるくらいそこから先が長い。熱海までは車なら自宅前から2時間と、上野東京ラインを使うよりも30分以上早く着けるが料金は倍も多くかかる。
 途中、伊東の道の駅マリンパークで朝昼兼用の食事を摂りながら1時間ほどの大休憩。下田現着は13時頃。家を出たのが7時30分だから長い道のりだった。道の駅開国下田みなとに駐車すると知り合いの愛好家氏達が既に到着していてそれから海縁でしばし歓談。久しぶりに見る下田港はあちこち景観が変わっていたが、漁協脇の岸壁から湾の中央に向けて新しく幅広い桟橋が建設中なのがいちばんの変更どころか。完成後は台船を使わずに、桟橋から花火を打てる、という展望もあるらしい。その新桟橋上完成済みの部分では担当煙火店のスタッフが台船への積み込みやら花火の準備の真っ最中だった。
 岸壁には今年初来港という海上自衛隊の掃海艇「はつしま」が接岸していて、翌日からの一般公開に備えて乗員が準備に追われていた。「はつしま」はこのまま期間中花火の間も停泊するようで、夜に備えて船縁の手すりにライトアップの電飾類の設置も行っていた。
 西風予報から下田湾の西側を観覧場所に想定していたので、三脚を持ってロケハンがてら下見に行く。下田はすでに色々な場所をロケハン済みだから風に合わせてどこかを選ぶだけだ。予定地はそれでも初めての場所で(私が来なくなる前後に埋め立てられた)道の駅からはそう遠くない徒歩圏内。そして海際のめぼしい位置に三脚を置いておくが、まだ打ち上げ台船も肝心の海上スターマインも所定の打ち上げ位置に設置されてない時間だったので仮置きといったところ。海側には柵や手すりがないので自分はもちろん機材の落水には注意が必要だ。
 往きの運転に疲れて車内で昼寝して起きた頃、16時近くなって海上スターマインを海に降ろして曳航が始まっていた。驚いたことに今回は5台の海上スターマインが仕込まれているではないか。過去に全部で5基以上というのは経験在るが5基の一斉出しは私が観覧した中では記憶にない気がする。しかも5基のうちセンターには10号、その他4基は8号入りと耳に入ってきた。豪華だなぁ。そのせいか単発大玉で二尺も尺5寸もなくなってしまったが。
 そして所定位置に着いたところで今度は車ごと三脚の近くまで移動して観覧準備にかかる。海上スターマインは撮影場所から約1キロメートルの間合い。やや斜め方向に並んで見えるが一直線になるほど真横じゃなく、5箇所全部が見えて良かった。なるべく向かい角度が緩くなる位置を見計らって三脚位置を修正。定位置に付いた台船とみさご島の7号他の打ち上げ場所が重ならないようにも注意した。台船までは400メートルほど。10号まで500メートルあまり。
 以前と比べて打ち上げ台船が1隻だけになっており、撮影場所からでは均等に打ち上げ場所が並ぶ、という風にはならず、10号筒が置かれた犬走島と台船の間がけっこう空いた配置になっていた。
 車を撮影場所の近くまで運べたので三脚2本でカメラも2台。プログラムによると犬走島からの10号は12発。メイン台船と距離が離れているので一緒の画角でフレーミングは本日の撮影場所からは無理。それで10号と海上スターマイン専用にカメラ1台振り分けた。もう1台は10号以外も海上スターマインまでを通しで撮る。海上スターマインの時だけ2台同時というわけ。海上スターマイン時の2台は微妙に露出セッティングと画角を変えてある。
 この海上花火大会の一番の名物・海上スターマインは某愛好家が「ヤツ」と呼んでその撮影のための挑戦記録を書きつづったことから、その愛称(?)で呼ばれたりしている。日中はその命名者と海上スターマインについてしばし歓談できて嬉しかった。私も1990年に最初に撮った頃は出だしのタイミングすらも掴めなかった。合図のトーチが点ってだいたい3〜40秒後に射出ということから露光の初めが難しい。さらに高輝度の射出後から上空での内包された玉の開花とで、明暗差が激しく(内容物はその都度違う)、いわゆるザラ星部分に合わせれば他が写らず、逆なら中心が吹っ飛ぶという難しさで、撮影者を苦労させてきた。なんだかんだと言っても、下田まで足を運ぶのはコレを観るためであり、最大の目的である。
 ラストの「ヤツ」は充分なタメのあと、一斉にではなく若干不揃いに順番に射出された。直前の錦冠スターマイン(特大)が猛煙を残し、それが海上スターマイン方向に行ったのでダメか、と思ったがクリアーだった。それはひと塊の目映い花火群となり、大玉群が頭ひとつ高く咲いて地鳴りのような咆吼とともに静かに消えた。玉のひとつは八重。やはり5束。高さこそ出ないものの豪華でボリューミーな開花だった。久しぶりに海上スターマインらしいフォルムに満足できた。
 私は過去に黒船祭に来るたびに、その都度いくつか撮影方法や露出設定を考えてトライしてきたが、今回の設定で試行錯誤は終了かと思う。露出的には落としどころが見つかったためだ。
 今回でもう見納めにしようかと思っていたが、西側から撮ると花火の周りはほぼ写るものがなくて、海上の反映だけになる。その意味では前景にクルーザーヨットなどを配してスケール感を出せる東側のハリスの小路からの絵が好きだ。東風予報の時が来たならまたいつか訪れたいと思う。
 終了後は奥まで突っ込んだ駐車場所から出るのに車が集中して少々時間がかかったが、帰路はおおむね順調に流れた。ノンストップで3時間40分ほどで帰宅。午前1時着。倒れ込むように爆睡。
    

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