花火野郎の観覧日記2015

観覧日記その6 4/11
第6回 辰ノ口さくら祭り花火大会

  
茨城県・常陸大宮市




   

撮影場所から

打上げ場所

  

ライトアップ

夜桜


8号三重芯


   

   
   
 野村花火工業が担当する、どこかの桜まつりが在る。ということだけ漠然と知っていた。誰かに聞いたのかも知れないし、その情報のソースは不明。人によってはこういうとき、直接野村花火工業に問い合わせるのだろうけど、私は苦手だ。大洗で社長にお会いしているんだから、聞いておけば良かったと後悔。
 最初は事務所のある水戸市内の桜まつりだと思って探していたが花火を伴う祭りが無い。渡良瀬の時に知り合いの愛好家氏にその話をしたら、どこで調べたのか後日この「辰ノ口さくら祭り」を教えてくれた。なんと水戸市より北側の常陸大宮市とは。それは気が付かなかった。おかげで初観覧にこぎ着けたわけでありがたい。
 しかしこの情報を得た時点で、「桜は今が見頃」と言われたので、いやー週末まで持つかな?と焦った。そして開催週は前日の金曜がほぼ一日中、開催日の土曜も午前中、しっかりと花散らしの雨が無情に降った。本降りの雨に東京都内はもちろん自宅周りの桜も花びらが無惨に叩き落とされた。
 当日も現地は天候の回復が遅れているみたいで、電話で観光協会に問い合わせると、雨天のため午前の野外イベントのいくつかは見合わせとのこと。花火の実施も確定ではないようだった。午後から回復の予報なので思い切って出かけてみる。桜が残っていなかったら花火メインで観るしかないか。
 小坂井の花火もご無沙汰なので行ってみたいが、車でも新幹線でも費用がかかるので断念。ちょっと設備投資をしてしまったばかりだからなぁ。とはいえこの常陸大宮も水戸より北側なので近いわけではない。車を使い例によって宇都宮上三川まで下道を走り、そこから最寄りICまで高速道という節約コース。自宅から往復で290キロメートルのドライブだった。GASも必要分だけ足して出発。最寄りICは常磐道の那珂IC。公式HPによるとそこから車で30分の距離なのだが、これが長かった。目的地の辰ノ口親水公園は位置的には北にもう20キロメートルほど行くと有名な「袋田の滝」に続くそんなあたり。
 ずいぶん走ったなぁという頃、会場直前で久慈川を渡るのだが、ここで川沿い堤防道路上に桜並木が長く続いているのが初めて見えて驚いた。なんとそこだけ満開の桜が残っているではないか。あらかじめ地図で調べたところ、総延長は約1キロメートル。素晴らしい光景だった。14時過ぎに久慈川沿いのまつり会場、辰ノ口親水公園に現着。すでにたくさんの車が入っていたが、会場隣接の駐車場に駐めることができた。初めての場所なので直ぐにロケハン。雨の心配はなさそうな空だったがとにかく風が冷たかった。
 習性で直ぐに花火筒を探すが、車を降りると川を挟んだ正面対岸の堤防道路上にそれが見えた。良かった。どうやら花火は実施方向のようだ。8号筒を伴うセンター位置に一番数多くあり、そこを中心に左右に二カ所、計5箇所のワイド打ち展開。設置位置がわかったところで三脚を携えて撮影場所探しのロケハン開始。車だから三脚は何本も積んでいるけどカメラは1台きりなので1本だけ持って。
 しかし会場側の堤防道路上だけ(対岸の堤防には無い)とはいえ道路片側に2列になって続く桜並木の素晴らしいこと。近づいてみるとまさに満開。風に吹かれてもほとんど花びらが散らない。堤防と川の間に桜並木の長さ分の竹林があり、これが桜に対して防風林になっているのがどうか。堤防道路だけでなく、近隣にも桜の木はあるのだが、他は半分ほども散っているのにどうしてここだけ綺麗に残っているのか不思議ワールド。スタッフに聞くと冷え込んだ日が続いたせいという。
 桜が素晴らしいのでロケハンもそこそこに写真を撮りまくる。インターではどんよりしていた空も青空が見え始め、桜が映える。ひととおり気が済んだところで付近をくまなくロケハン。残念ながら花火を真正面に観る位置の堤防道路には桜並木が無い。少し手前で途切れているのだ。もし花が散りきっていたらワイド列に対して真正面から観覧、撮影しただろう。もしくは風上狙いで対岸に渡ることも。しかしせっかく満開のタイミングに恵まれたのだから今回はこれをあしらわない手はない。正面と川の上流側(北側)に桜が無いので、花火に向かって左方向南側に延々と続く並木を間に入れる位置を検討。私の好みとしては花火の根本に横一線に並木がほどよい大きさで入るイメージ。あくまで花火に花を添える感じだ。それには花火に対して斜め45度くらいのハス位置になる。あとはその間に入れる桜並木と花火との相対バランスで撮影場所が決まる。雨だったせいか、堤防を降りて農道や田圃脇を歩き回っているうちに靴が泥だらけになってしまった。位置的に良くても電線が、立木が、桜の位置が・・・・とマイナス要素が絡み、それほどポイントが多くあるわけではなかった。地元の写真愛好家らしき人も何人かぐるぐる探し回っていた。現地情報は地元の人からに限る。それで話を聞くと、昨年は桜は盛りを過ぎてしまっていたらしい。どこでもそうだけど自然のことだから祭り期間中に満開のタイミングがうまく合うかどうか。だからこの日、思いがけず満開に遭遇したのは願ってもない幸運なタイミングになったわけだ。
 で探し回ったあげく、田圃脇と梅林の境みたいな所が良さそうという結果。堤防と同じくらい視点を上げたかったのだけれど、同等の構図でそういう場所がなかった。これで堤防の桜から約100メートル下がった位置、花火5箇所設置の真ん中まで420〜430メートル。画角としても縦28ミリで超余裕といったところ。
 桜に近づけば、画面上で桜は存在感を主張していくが、位置的に堤防下から上にある並木を見上げてさらに対岸の花火。となると桜の上にどれだけの高さに花火が上がるのだろう。それが気になって並木から距離を取った。筒場をよく観察すると最大の8号筒は5本、5発しかないので、それは高さが出るだろうけど他が桜の上スレスレになってもなんだかなぁ。
 撮影場所の目星を付けたところで休憩。今日はたいていの愛好家氏は小坂井なんだろうと思っていたら、会場では意外や何人ものお知り合いに出会ってびっくり。私など開催週にようやく場所がわかったくらいなのに皆さん詳しいなぁ。それで遭遇するたびにあちこちで歓談。このイベントの開催を教えてくれた愛好家氏と現地で合流できたので、しばし歓談後並べて三脚を立てることになった。
 予報では終始北北西の風で、現地もそうだった。この撮影場所を選ぶと風下気味だけど、桜並木を挟むには他の方向に選択肢はない。おそらく単発打ち主体とみて桜優先、構図優先とした。車に戻って昼寝。夕方、傾いた陽射しに照らされた桜並木が綺麗だったのでまたまたひとしきり撮影。空はほぼ快晴に好転していた。
 午前中に電話したとき、夜のライトアップもどうなるかわからない、と言っていた、桜並木には既に電球の入った提灯が延々と渡されていたがライトアップはそれだけではなかった。到着時には用意されていなかったが、桜の根元にはいちいち野外用の電源コンセントが配置されており、夕刻になるとそこにライトを繋いで桜の根元に置いたのだ。ちょうど下から真上を照らす感じ。驚いたことにそれが並木の途中まで約3〜400メートルほど、ほぼ桜の1本に一灯という具合に配置されていたこと。これは手の込んだライトアップだと驚いた。それが夜にどういう風に見えるのか辺りが明るいうちはには判らなかったけれど。
 18時前に撮影場所に機材を運んだ。足下が悪いのでカメラザックにすれば良かった。開始の19時近くまで快晴の空だがまだほの明るかった。しかし撮影準備中しだいに暗くなるに連れて桜並木の素晴らしいライトアップが際だっていった。桜の外側遠くから全体を照らしているのではなく、それぞれの根本からだから本当に一本ずつがくっきり闇に浮かび上がっていた。それが横一列に延々と続く様は息を飲むような美しさだった。いやいやこれほど素敵で完璧な桜ライトアップはなかなかお目にかかれない。もう早くもこの上空に花火が開いたらとその光景を想像するだけで陶然となる思いだった。
 それにしても静かな夜だ。上流の辰ノ口堰を落ちる水の音が聞こえるくらいでイベントをやっている割には絶えず音楽を流しているでもなく静けさに包まれていた。そして19時近くになってようやくアナウンスが聞こえてきた。玉名を告げているのかどうかよく聞き取れなかったが、多くを語らないアナウンスでやはり静かな観覧だった。観客が多く集まっている場所とは離れた田圃脇。後から別の写真愛好家が数人近くに来たが、人の気配もそれぐらい。空は快晴できらめく星が綺麗な夜空。正面右手に北斗七星が登っていくところ。だからほぼ北方向にカメラを向けている格好だ。
 打ち上げはゆっくりと間を開けた4〜5号単発打ちと小型煙火。1発ずつ間が空いているので、桜並木にも前後で十分露光がかかる。ワイド5箇所打ちはどうやら一番最後とっておきの1回きりだろう。途中8号が3回。つまりラストに2発入りのスターマインか。並木を意識して横位置でスタートしたが、途中突然8号が入り、めいっぱい広角(24ミリ)にしたけれど盆の上が少し切れた。そこからあとは縦位置で撮り続ける。縦なら余裕。また、ワイド列に対して斜め位置なので楽に縦で入る計算。思ったとおり、最後だけワイドスターマイン。数多く打つとさすがに煙の影響を受けるが素晴らしいフィナーレだった。割物に多重芯が多数入るわけではないが(最大三重芯)、幻想イルミ系の玉はいくつも打ち上がってそのたびに感嘆した。
 終わった後は、堤防に上がってライトアップされた並木をひとしきり撮影してから帰路に付く。

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