花火野郎の観覧日記2014

観覧日記その21 10/4
第83回 土浦全国花火競技大会

  
茨城県・土浦市


10号・昇曲付四重芯変化菊
長野県 株式会社紅屋青木煙火店

10号・昇り曲導付四重芯変化菊
茨城県 野村花火工業株式会社

10号・昇銀引五重芯変化菊
秋田県 小松煙火工業株式会社

10号・潮騒のメモリー
東京都 株式会社ホソヤエンタープライズ

10号・昇り曲導付四重芯細波錦
愛知県 豊橋煙火株式会社

10号・虹色のグラデーション
山梨県 株式会社齋木煙火本店

10号・昇り曲付三重芯往復牡丹
山梨県 株式会社マルゴー

  

10号・昇り曲導付四重芯変化菊
石川県 北陸火工株式会社

10号・昇り分砲付四重芯菊先紅緑銀乱
長野県 有限会社伊那火工堀内煙火店

10号・昇曲付五重芯銀点滅
茨城県 株式会社山崎煙火製造所

10号・昇り曲導付四重芯変化菊
新潟県 阿部煙火工業株式会社

10号・昇曲付四重芯変化菊
群馬県 有限会社菊屋小幡花火店

10号・昇曲付三重芯覆輪漣
新潟県 有限会社片貝煙火工業

10号・昇曲導付四重芯変化菊
新潟県 新潟煙火工業株式会社

スターマイン・燦然世界
愛知県 加藤煙火株式会社

スターマイン・燦然世界
愛知県 加藤煙火株式会社

スターマイン・心に残る懐かしい風景
栃木県 有限会社関口煙火工場
9177.gif
スターマイン・未来への架け橋〜煌めく世界へ〜
新潟県 新潟煙火工業株式会社

スターマイン・
幻想イルミネーション
茨城県 野村花火工業株式会社

スターマイン・にじいろ
山梨県 株式会社齋木煙火本店

スターマイン・にじいろ
山梨県 株式会社齋木煙火本店

スターマイン・愛の花束
秋田県 株式会社和火屋

スターマイン・
やさしい光に包まれて
山梨県 株式会社マルゴー

スターマイン・Love and peace
宮城県 株式会社芳賀火工

スターマイン・心の花
福岡県 高田花火工業


スターマイン・笑顔の先へ繋ぐ想い
群馬県 有限会社菊屋小幡花火店

スターマイン・illusions
長野県 株式会社紅屋青木煙火店

創造花火・昇天銀龍万華鏡写丸
秋田県 株式会社和火屋

創造花火・八重咲夢の紙風船
東京都 株式会社ホソヤエンタープライズ

創造花火・桜川のしだれ桜
長野県 有限会社篠原煙火店

創造花火・風鈴〜あの夏の思い出〜
秋田県 小松煙火工業株式会社

創造花火・回転している独楽
静岡県 田畑煙火株式会社
  
 午前6時20分。観覧場所現地で私は唖然としていた。取っておいた場所が無い。私の場所と印をつけた所は別のガムテーブで場所取りされていた。
 実はといえば、木曜の晩に仕事帰りに場所取りした。さすがに昨今の土浦の状況を考えるに、当日いくら早く出かけても無理だと思ったからだ。主に観覧場所にしている桟敷裏の田圃一帯も、近年は新しいアパートや住宅がいくつも建てられ、次第に観られる領域が狭まっている。農道も舗装整備されたりして、我々愛好家だけでなく、近隣の住民も早くから場所取りするようになってますます厳しくなっている。都内からは現地まで40分ほどだからちょっと寄り道くらい。ところが2日前の晩でももう取れる場所がないくらいマーキングされていた。隙間を見つけてガムテーブで確保したつもりだったのだが。前日の金曜日に場所取りに来た様々な愛好家氏の話を総合すると、金曜日の午前中に市の職員とおぼしき一団によって剥がされたらしい。それでその後また別の人がマーキングしたとそういうわけ。場所取りしても確実にその権利を主張できるわけじゃないにしても、1週間も10日も前から取ったという場所は無傷なのに、なんで私の取った所を含むほんの50メートルくらいの区間だけ剥がされるのよ。場所取りを一掃したところと何週間もそのままで良いところと、差があるのはどういうわけか。
 田圃に腰掛けて撮る分には午後4時くらいでもでもぜんぜんOKなのだが、三脚の足下のしっかりした舗装道路で見通しの良いポイントとなると当日になってしまえば、良さげと思われる場所が残っているはずもない。途方に暮れて歩き回っていると、事情を聞いて手を差しのべてくれる愛好家氏が何人も現れて、いくつか観覧場所を都合していただいたので感謝感激であった。最終的にレンズの画角の関係で、元に確保した場所に近いところに落ち着いた。しかしこれでは前日に朝から一日中、現地に居なければならないというのか。仕事帰りに夜に立ち寄るくらいならともかく、それでは前日の晩にはもう雌雄が決しているのだから結局どうにもならない。場所取り一掃にやるところとやらないところが在るのがわかったから、来年からは一掃されない場所に何ヶ月前からでも場所取りするしかないようだ。とりあえずなんとか落ち着き場所は得たので三脚を置いて、車を駐車しに行く。折り返し機材を運んで観覧支度は完了。
 本当に何年かぶりで車で出かけてきた。高速道路を使えば観覧予定の現地までちょうど1時間くらいだ。これまでのように電車も考えたのだけれど、終了後の(往きはタクシーだもん)機材を持っての土浦駅まで3キロメートル強の歩きはなかなかきつい。とくに過去2年間のコンディションが悪かった年は何の成果も無かったから堪えた。車を失うまでは対岸の打ち上げ場所側の田圃の中に止めていた。近くに臨時の有料駐車場もあってそれを利用したこともあった。そこからは1キロメートル弱なので機材を運ぶにも負担が軽い。今回も裏手の田圃方面に止めた。近くにはやはり農道などに駐車してそのまま車の前の田圃を観覧場所とする一行も多い。
 3度目の正直なのか、2度あることは3度あるのか、過去2回どうしようもないコンディションに見舞われた土浦。とくに昨2013年はその前年2012年のような土砂降りこそなかったが、開催時間には低く雲がたれ込め、終始花火のほとんどが見えなかった。私が過去に観た24回のうちで確実に最悪のコンディションと断言できる。
 その見えなさ加減には頭に来て、まともな写真も無いから観覧記を書かなかったくらいだ。なにせ10号は曲導すら射出直後に消失。雲が厚く、開花したその光芒さえも見えない時もあった。それでたまに星先が顔を出すか出さないかという中で審査したのだから開いた口がふさがらない。目の前に姿の無い花火ををどうやって採点したのか。星先はともかく盆の中心部はいずれもまったく視認不能というのに。スターマインや創造花火も似た状況。たれ込めた雲が鈍く星の色に光るだけだった。
 中座して帰る愛好家も多かった。最後まで居たって何の成果も得られない。雨が降っていてもかろうじて花火が見えた2012年と違って、霞むくらいなら可愛い。ほとんどの出品作が見えなかったのだから。
 迫り来る台風18号に吹き込む風か、日中から終始押し気味の良い風向きだった。午後から晴れ予報も出ていたが終日曇りで、焦がされなかったのはありがたい。このまま夜を迎えてくれればと考えるが、日中は問題なく過ぎた昨年の悪夢がよみがえるから、花火が全て普通に見える状態で終了するまで信用できない。
 皆さんのご厚意で、無事に観覧場所を得た後は、日中何度かスターマインの出る位置を確認しに堤防道路まで行ったり、車の様子を一度見に行った以外はほとんど撮影場所近くの田圃一帯をうろうろしていた。あちこちに待機する愛好家氏と歓談してまわり、それだけで長い午後も楽しく過ごすことができた。
 夕刻になって田圃に入っていく一般客も増えたが、後ろの通路といい、私の周りだけかも知れないが、意外とお客が少な目と感じた。田圃は過去に比べれば問題なく乾いている状態だったが、客は距離を取ってまばらに座っている。
 撮影機材以外にはAMとFMが入るレシーバーが重宝する。AMの茨城放送では、知り合いが花火解説者として出演するので、たまにそれを聴いて。あとは進行とスターマインに伴う音楽の放送を聴いていた。
 電車で三脚二本を運ぶのは覚悟がいるけど、車なら楽ちん。それでカメラは2台体制とした。メイン、サブの分けはないが、D800が全プログラム担当。645Dが割物担当。とした。10号割物は645Dだけにして分担しようと考えていたが、銀塩の時そうしていたように、両方で撮ることにした。固定の画角で撮るのと追跡法と同時撃ちだ。固定の画角では下から曲導込みで全てを撮れる。万一やたら盆が大きくても入る。追跡側では画面みっちりに撮れる。
 今回は標準審査玉の上がる18時の開始前にも打ち上げが盛り込まれた。「レクチャー花火」。なんでも八代の競技会に視察に行った主催者が取り入れる事にしたらしい。つまりこれが菊で牡丹で、という花火教室だ。まだ実況放送を聴いてなかった私は、まだ18時じゃないので、一種類目の「和火」が上がってびっくりした。プログラムを確認すると17時45分打ち上げ、と時間通りだが、頭から抜け落ちていたぜ。レクチャーが終わると、やや経って「花火師登場」。桟敷から観るとライトアップされたお立ち台に花火師一行が並んで立ったらしい。そして野村花火工業の野村陽一氏が開催に先駆けて花火師代表として挨拶をした。
 標準審査玉が続き、競技開始。以降滞りなく流れていたが、10号割物40番マルゴーの昇り曲付三重芯往復変化牡丹で過早発が発生。惜しくも地上開花となった。桟敷から観ていた愛好家仲間によると、低く打ち上がって、筒から出て破裂したらしい。直近に人はいないものの、「点検をしています」とのアナウンスが繰り返し流れ、筒や配線など一帯の点検にしばし中断となった。
 桟敷後ろの田圃辺りで観ていると、桟敷と堤防道路を分けるコンパネの壁を作ったことも原因で、河川敷のスピーカーの音が直接はほとんど聞こえない。だから実況放送を聴いていないと、何が起きたか、次に何をやるのか?もわからない。
  

大会提供ワイドスターマイン
土浦花火づくし

大会提供ワイドスターマイン
土浦花火づくし

大会提供ワイドスターマイン
土浦花火づくし

大会提供ワイドスターマイン
土浦花火づくし

大会提供ワイドスターマイン
土浦花火づくし

大会提供ワイドスターマイン
土浦花火づくし

大会提供ワイドスターマイン
土浦花火づくし

大会提供ワイドスターマイン
土浦花火づくし
  
 花火については多くを語るのはやめて、写真だけを見て欲しい。とにかく観覧コンディションが良いと言うことはこれほど素晴らしいことかと感激していた。 割物を観てあらためて思ったのは、芯を揃えて丸く開かせるのは、かくも難しいか。ということだった。
 相変わらず土浦はスターマイン頂上決戦なのは間違いない。そしていずれも土浦ならでは、というよりその煙火店のとっておきを繰り出してくる凄さで目を離させない。頂上決戦には武器が必要だ。それがその作家独自の花火玉であり、演出である。そして昨今欠かせないのが「星」。花火全体はもちろんだが、私を特に楽しませてくれたのが、この「星々の輝き」。開花した花火は星の集合体であり、その明るさ、色合い、変化、動き、全てが美しく新しい。
 夜空に完成形として咲く花火の姿は、部品と込め方(組み立て構造)で決まる。だから当初より星は重要な部品なのだが、その星が現在は極限まで複雑になっている。昨今のトレンドは何回も短時間に変色する星や、変色点の移動など。花火の重要部品がこれほどまでに進化を遂げて展開するとは、少なくとも10年前には考えられなかった。
 目映い明るさと凝った変色、ここにトレンドがある。もちろんそれを取り入れなくてもその煙火店ならではの他所には無い星を使えば、その作品は目を引く。引き立つ。それだけでもう他は違うパフォーマンスとなる。とりわけ変色星の進化は、これをいつまで続けられるのだろう?と思うくらい、その製造には手間がかかっていて感嘆する。星のトレンドはいくつか在るが、現在の土浦で目を引くのは主に次の二つだ。
 まずは多段階の高速変色。以前より、n度変化、という星はあった。4度変化、5度変化と玉名の構成用語にもなっている。つまり星の色が4回変わる、5回変わるの意味。しかし玉名用語として用いられるそれは、一般に「親星の変化」のこと。つまり親星が消えるまでの「比較的長い時間のうちに」n度変わるものを言う。しかし昨今のそれは、変色がもっと短時間、かつ高速だ。5色6色7色、虹色に高速変化するものだ。これも当初は1秒も無い中で7色変わるというものでスタートしたがそれでは目にもとまらない。だから変化の時間が速いものからゆっくり変わるものまで作り分けている業者もある。比較的時間を掛けて変色するものは親星にも使われる。高速なものは、ポカ玉に仕込んだり、ザラ星に使われる。多段階になめらかに変色するグラデーション変化も目を引く。星掛けの手間は従来と同様だが、掛ける薬剤を何通りも作るという猛烈な手間がかかっている。
 もうひとつのトレンドは時間差設定。ある色から次の色への変色ポイント、つまり変わり始めるタイミングをずらしていくものだ。変色ポイントの異なる星を何種類も作ってそれをひと玉に込める。そうしてできた花火は開花と同時に複雑な光の移動現象になって目に飛び込む。
 時差を初めて観たのはこの土浦で静岡のイケブン出品の回転リングだ。変色ポイントが移動することで全体のリングが回転して見える。当時はこの玉に込められていた星は5種類くらい。今はその何倍もの変色ポイントの異なる星が入っている。少しずつ1秒もないほどの時間差で変わる星を何種類も作る手間。しかもできた星は全部黒玉。どうやって管理しているのかと驚くばかりだ。回転ものなら星を入れ間違えばもう回らない。
 その後盆全体が、地球がまわるように回転して見える小松煙火工業鰍フ時間差発光球や、潟}ルゴーの往復変化牡丹へと進化する。マルゴーのそれは右回り左回りと連続して変化が折り返すという凝ったものなのに驚く。過早発になった玉がこれだと思うから観たかった。
 これを応用して、星が消えるまでの間に、基本色とは別色のより明るい明滅ポイント(そこだけ基本色より別の色で明るい)を設けているのが野村花火工業の幻想イルミネーションの星だ。これもその明滅点を前後に移動させることで、複雑な見え方をする。ぐるりと回るようにも込められるし、ランダムに込めれば、あちこちで不規則に光って、まさに幻惑される印象。
 こうして時差変色でも点滅星でも、その煙火店独自の星がいくつかあれば、それだけで武器になる。丸い割物にするのはもちろん、八方咲き系にしたりポカで落としたり、ザラ星としても使える。独自性をより強調した演出ができるのだ。この土浦の競技会では、部品も使用玉も演出もオリジナルでなければ勝ち目がないだろう。
 大会提供も終わり、全体が終盤に差し掛かると、後ろを駅方向に向かってぞくぞくと客が通り過ぎていくのがわかった。小旗を先頭に団体客もどんどん帰る。最初から中座予定のツアーなのだろう。
 私はといえば、朝からずっと立ちっぱなしで腰が痛い。しかしそんなことも場所取りのことも、素晴らしい花火群が払拭してくれた。全ての作品が星の一粒までよく見えた素晴らしい晩だった。
 アクシデントがあって終了時間が押して21時近くになっていた。電車組は気を揉んだことと思う。しかし電車組に後日話を聞くと思いの外、土浦駅にはすんなり入れたという。私はカメラ2台という店じまいに手間取って、車に戻ると21時35分。田圃近くに駐めるとなぜか土埃で全体が真っ白。フロントガラスだけお掃除してスタート。22時前に土浦北ICイン。往きより早く50分ほどで帰宅。電車で東京都内に帰り着いた知り合いは、その時点で雨が降り始めていたと後で聞かされた。
 翌日は自宅周りでも朝から本降りの雨。台風により次第に風波が強くなり、午前中は大荒れだった。土浦全国競技大会がこれを免れて好コンディションで終始したのは本当に奇跡のような時間だった。しかし一昨年、昨年と too BADな気象条件だったのだから、ようやく報われたということか。
INDEXホームページに戻る
日記のトップに戻る