花火野郎の観覧日記2012

観覧日記その9 7/25
神奈川新聞70周年記念 第27回 神奈川新聞花火大会

  
神奈川県・横浜市


     

20号
       
 蒲郡で傷めた腰はなかなかヤバい感じで、様子を観ながら横浜に向かう。いつものようにさっさか歩けないのがもどかしい。
 機材を見直す時が来ていると思える。仕事帰りに横浜に向かう私の背にあるのは、カメラ関連だけをみれば、デジタル一眼一台とズームレンズ。リモートケーブル。予備の電池やLEDライト、クリーニング道具とこれだけだ。カメラとリモコン、そして三脚が在れば花火は撮れる。なんとも軽装備なのに必要にして十分。
 今までなにを沢山持っていってたのか?と考えてしまう。電車利用で身一つで運べる量。フイルムからデジタルに換えることで、大量のロールフイルム、カートリッジ、交換レンズを減らすことが出来る。むろんデジタルとてただ軽くなるだけでなく、泊まりのロケならバッテリーチャージャーなども必要になる。
 しかしフィルムとメモリメディアの容積、重量の違いは大きい。フイルムも撮ったからといって本数が減るわけではないから重量は同じ。
 ズームの守備範囲が広いのも助かる。万一に備えてカメラボディの予備が必要だが、銀塩のそれに比べれば軽い。身体のどこかが故障するとそういうことが魅力である。機材を背負うにもカートで曳くにも軽ければ身体への負担も軽い。
 臨港パークに着くともう開始まで30分あまり。当初別の観覧場所も検討していて、先にそっちに寄って画角などを再確認したりして遅くなった。結局そちらは使わず(後半の打ち上げを観たらそれは正解だった。これは目の前で観なければ)、事前にチケットを買ってあった臨港パークに決定。
 昨年は開始時間がもっと早く、まったく余裕がなくて入場して50メートル行かない場所での撮影だったが、今回は奥の潮入りの池あたりまで突っ込む。すでに最前列の海縁はびっしりと観客が座り込んでいたが、その後方はスッカスカだった。無料で自由に場所取りさせていた頃からは信じられないくらいゆったりしている。
 知り合いの愛好家氏達は、早くから来ているのだろう海辺の最前列に座ったり三脚を並べていた。海縁のアーチ橋(視点が高い)を渡りながら海上の台船の配置と、二尺筒の位置を確認。いちばん高価な協賛者席に寄せたのか全体的にずいぶん北西寄り(臨港パークから観て左寄り)の配置だった。
 入り口でプログラムが配布されるらしいのだが、到着が遅かったのか入手できなかった。しかし知り合いの愛好家と出会ったことで余分を分けて貰えたのでありがたかった。
 打ち上げ位置は確認したものの開始まで30分を切ったところで、さてどこから撮るか。海縁は埋まっているし、芝生エリアも海上の見通しが良い場所はダメそうだ。視点の高い位置で入れそうなところもない。
 臨港パークの奥には潮入りの池という水辺となだらかなアーチ橋が架かっている臨港パークらしい場所がある。そこを前景とすることにした。何度もここは訪れていて佇まいを把握していて助かった。潮入りの池は端が海と繋がっている円形の水辺施設で自由に場所取りさせていた頃はこの周辺は人で埋まっていたのだが、今回は立ち入り規制されて周辺の観客も疎ら。人が居ると立ったり座ったり横切られたりと煩わしいので今回は使える、と思ったのだ。それと象徴的なアーチ橋は渡るだけでその上では観られない、という規制がされていて警察かなにか常駐していた。
 これもいい。このアーチ橋が制限されていないと見晴らしのいいそこに橋の形に三脚の壁が出来るのだ。それで台船の全部と海上は素通しで目視できないものの、臨港パークらしい前景としてこのアーチ橋と池の水面反射を取り入れることにした。海縁に立つ既着の愛好家氏の三脚がシルエットで抜けそうなところは街路灯の柱で隠したりと、細かく立ち位置を調整。さらに台船の位置から、前半とワイドで打つ後半とでは立ち位置を5メートルくらい変えている。この位置での撮影ではアーチ橋をど真ん中に置く構図が基本になるが、今回は複数在る台船の配置を優先している。後ろで観ている観客も居ないし気兼ねのない撮影だった。
 最大広角で構図を確認すると意外にみちみちな感じだ。あちこち設定を確認しているともう開始の花火が上がり始めた。いやぁギリギリだな。プログラム前半第1部は例年通り台船2隻(うち1隻は20号船)からの単発とスターマイン。後半第2部、スカイシンフォニーin YOKOHAMAでは、台船4隻を使ったワイド打ちという事前情報だった。到着時に肉眼で観てもその4隻にはこぼれ落ちんばかりに花火筒が満載でその量に緊迫感を感じたくらいだった。
 前半の目玉としては、ラストに20号1発。煙火芸術協会の10発の尺玉出展、例年どおりの篠原劇場。今野劇場、本田劇場とみどころは多い。昨年は目玉としての20号が無かったので、今年は中盤とラストの2発だけだが復活したのはやはり嬉しい。スターマイン系が上がると、潮入りの池の映り込み具合がいい感じだった。曲打ちの根元は見えないが間際の到着にしてはそこそこの構図ではないだろか。
 さて神奈川新聞70周年スペシャル企画、コロワイド提供スカイシンフォニーin YOKOHAMAの始まり。最大10号を300発、総数10,000発というふれ込みの壮大な打ち上げはどういうものか期待が膨らむ。そしていきなり巨大な壁となってせり上がる猛烈な打ち始め。
 とにかく物量だけのやんちゃな打ち上げに違いない。という推測は良い方向に裏切られた。複数の台船に分けて積載されているはずの花火群が、まるでひとつに繋がった長い防波堤に並べられているようにまったく綺麗に統制された打ち上げじゃないか。こういうところはさすがにスカイコンサートで慣らして長けている。やるときは本領を発揮する。と感心した。ところどころ装填ミスなのか異種の玉が紛れているようにも感じたが些細なこと。とにかく圧倒的にして驚異的、壮絶な打ち上げだ。
 このコロワイド提供の約30分間だけで、小規模な花火大会5つ分くらいだろうか。打ち始めから全速力、フルパワーでの打って打って打ちまくり。ひとつのパートが終わらないと花火が途切れる間が全くないと言ってよいほどの怒濤の物量だ。しかもめちゃくちゃな打ち上げじゃなくきちんとデザインされている。いやっはー…こりゃマジで10,000発出してるんじゃないですか?
 10分も(1/3)経たないうちに既に観客が静かだ(周りに少ないけれど)。「声を出す余力も無い」のか。観客の感動メーターが振り切れてしまっても、さらにむち打つように、追い打ちをかけるように怒濤の打ち上げが続く。この物量では台船の上は火の海ではないかと考えたり。
 最後は錦、銀の凄まじい量のフィナーレ。久しぶりに訳のわからない言葉で絶叫していた。こんなことは本当に久しぶり。これだけの物量の打ち上げをそれなりの形でまとめ、そして成し遂げてしまうのは素晴らしい。
 この約30分間だけで、80カットくらい押している。これがフィルムなら予備カートリッジ2つで30枚撮り×3、つまりチェンジしながら90カットが上限。数は足りているが今回みたいな猛烈な量とスピードではフイルム交換の数秒の間にどれほど撮り逃してしまうことか。そこは途切れなく撮り続けられるデジタルはありがたい。途中で興奮と速さでリモコンが汗で滑ってちゃんとレリーズ出来ているのか不安になったほどだった。
 残念なのはその後、ラストの20号だ。曲導が昇る。その間に画角を変え、絞りも変え、フレーミングし直して撮る。しかし。これだけのフィナーレの後では落差は禁じ得ないが、この見窄らしい錦冠はどうしたのだ?盆もこれが20号?なら全然引かない親星は何だ?錦冠の長大な垂れが海面近くまで来るかと思いきやなんという呆気なさ。10号の錦牡丹ですかこれは。いやいや神奈川新聞のラストでこんな20号錦冠は初めて観た。1発目、2発目とも20号は前の打ち上げの煙の残る中に打ってしまったので見映えは残念だった。こういうところは配慮して欲しい。
 臨港パークから出て歩き始めると身体に力が漲っているのに気が付いた。花火を観たあとに元気パワーがフルに注入されたのは久しぶりな感じだ。
 同パークの最深部まで突っ込んでいる場合は、クイーンズスクウェアの方ではなく横浜駅方面に直接抜けた方が早い。しかし臨港パークの協賛者席側から外に出て驚いた。そこから新高島駅方向に続く上下4車線ほどの幅広い道路や、普段空き地として囲って立入禁止にしている区画まで開放して全て観客が埋め尽くしていた。だから新高島駅方向へは凄い人の波になっていた。それを縫うように歩いて、みなとみらい線もひと駅だけ使いながら横浜駅へ。20時49分の新宿ラインに乗ることが出来た。帰宅は22時20分。
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