花火野郎の観覧日記2011

観覧日記その1 1/2
ツインリンクもてぎ 花火の祭典〜新春〜
  
栃木県・芳賀郡茂木町

 新春早々、クリスマスの時と同様に知り合いの車で送迎していただく。集合の宇都宮駅まではJR在来線だが、12月23日も休日なのにガラガラだったのに今日は初詣帰りの客が乗っているのか下りにもかかわらず座れなかった。ツインリンク現着は同じく14時過ぎ。ゲートには新年の挨拶が掲げられ、大きな門松と場内に流され続けているそれらしい琴の音色だけが正月らしさを醸している。年末年始は全国的に大荒れの天気だったようだが、関東地方に限っては冬晴れの新年だ。この日も青空が拡がり、陽射しの元では暖かささえ感じる。風が強めだったクリスマスの方が寒かったくらいだ。
 ゲートを抜けた後はまたも真っ直ぐに第2ターンを目差す。到着時の風向きはオーバルの短い径を横切るような南西方向だったが、開催時の予報は北からになっている。それでクリスマス時とほぼ同じ位置に三脚を構えて設置状況を確認する。そういう予報だからさぞや混雑かと思ったが、またまた第2ターンのスタンド上部にはほとんど三脚が無かった。一般のお客さんも居ない。今日は双眼鏡を携えてきたので新春恒例の100発一斉同時打ちの左の始まりはどの辺りかを探す。すると昨年と比べるとややグランドスタンド寄りであるものの、既に設置された筒が確認できた。オーバルコースのストレート長は400メートル。その内輪に入ってしまう設置なので100発一斉の幅は350メートルくらいだろうか。それから筒の配置に合わせてカメラのファインダー越しにだいたいの構図と使用レンズをチェックしておく。右端がどこかは建物の陰でこちらからは見えないが、28ミリ相当横位置で左端を合わせれば右は成り行きで全部入るだろうと思われた。一番後方の設置ラインにはその350メートル幅の中に10号筒がずらりと並んでいる。中央の一群は「新春の願い」用だろうか16本。それを中心に左から4本、2本、4本、16本、2本、4本と計32本の10号筒。新春の願い12発を含んでいるであろう16本を除くと、4本の3カ所打ち、その間を埋める2本2箇所、つまり5箇所打ちの10号が用意されているようだった。とそこまで筒を数えたところで、左側4本の10号群が自分の正面辺りにあることに気が付く。ぐは……年明けからいきなり厳しい設置じゃないか。これは左端で10号打たれたら絶対にフレームアウトだ。とくに第2ターン側は間合いが300メートルほどと反対側と比べると100メートルくらい近くなるので厳しい。ワイドの設置に対する間合いが目一杯の茂木に対し、けっこうハス位置にしているのは前回同様。けれど今日の10号の配置ではこれでも太刀打ちできそうにない。だいたい両サイドで10号打ちとなったらこの立ち位置でも双方を画角に入れるのは無理っぽい。
 クリスマスから10日しか経っていないがもう新年だ。再会する愛好家氏と各所で新年の挨拶を交わして歓談。カウントダウンやらに出かけた愛好家氏から土産話しなどを伺う。そしてグランドスタンド近辺をざっとロケハンしてから飲食ブースで早めに夕飯にする。茂木ではグランドスタンドと花火設置列が平行ではないから、私が三脚を置いた第2ターンからだと28ミリ相当の横位置で100発一斉の全貌が収められるが、グランドスタンドの南側第3ターン方向だと100発の根本も全部入らない。100発一斉の設置も毎度同じじゃないので今回も反対側に来て確認したわけだけれど、今年の筒の配置ではグランドスタンドに近いA指定上部ぐらいだと手持ちのレンズでは入りきらないと確認した。もちろんデジタル一眼のムリムリ広角なら曲導をバタバタと折り曲げて入れてしまえるけど今日はフィルム一発だし。それで風向き予報と合わせてやはり第2ターン側と判断した。同道した愛好家仲間とクリスマス時と同様に三脚を連ねた。
 開始は17時30分と早めなので現着時間からしても、歓談などしているうちにそれほど待たずに本番タイムになる。一般客はクリスマスの時の方が多めかなと感じた。それでも初詣帰りかそれなりの入場者があるのはこの新春イベントが定着している印なのだろう。飲食ブースも来るたびにそそられるメニューが並んで目移りしてしまう。
 あと1時間ほどになったところで三脚の場所に戻って準備にかかる。昨年の新春では第5部があるのを完全に意識してなくてドタバタしたので、アナウンスがプログラムを説明した時にきっちりと確認しておく。人の車に乗せて貰うのだが図々しくも三脚は2本持ってきてしまった。カメラは2台で今日はどちらもフイルム。メインは645でレンズは24と28ミリを使用。縦位置に決めてこっちで出るものに合わせて全てのプログラムを撮る。サブは6×7で横位置で100発一斉専用。ワンカットのみの起用だ。100発一斉については到着時にチェックしているがまだ場内灯が健在なうちにサブの方で構図を決めて固定してしまう。場内灯が落ちると打上方向は完全に暗転するので肉眼ではコース内の事物が見えてもファインダー越しになると見えづらく、緻密に構図を決めるのは難しいからだ。
 あと3分です。アナウンスに促されるように次第に場内灯が落ちていき、舞台が暗転する。毎度ながら期待が高まっていく数分間だ。
  

第1部 初春の訪れ

第1部 初春の訪れ

第1部 初春の訪れ

第1部 初春の訪れ

第2部 彩り

第2部 彩り

第3部 新春の願い
辰 初日の出 太陽の花

第3部 新春の願い
巳 八重芯菊先青紅光露

第3部 新春の願い
午 三重芯錦先銀乱

第3部 新春の願い
未 煌めきの花

第3部 新春の願い
申 三重芯菊先青白点滅

第3部 新春の願い
酉 八重桜

第3部 新春の願い
戌 四重芯菊先ピンク光露

第3部 新春の願い
亥 銀千輪

第3部 新春の願い
子 四重芯菊先紫光露

第3部 新春の願い
丑 八重芯錦花冠点滅

第3部 新春の願い
寅 四重芯点滅花

新春の願い・5発一斉
卯 彩色百花園
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第4部 早春譜

第4部 早春譜
100発一斉

第5部 越冬

第5部 越冬

第5部 越冬

第5部 越冬

第5部 越冬
  
第1部 初春の訪れ 
 静かな出だしは中央から桃や桜を思わせるはっきりした色のピンク星をあしらった各種打上げ。次いで4号の単発打ちで花芯の菊花や牡丹。花弁の色を変えて打ち続く。小玉ながら3度のはっきりした変色の親星が見事で目が覚める。
  
第2部 彩り
 事前のアナウンスでは、小花がどうの、と言っていたので千輪モノをワイド単発で打ち散らすと予想したのだが、それは全然違っていた。2部の中心玉は大曲や土浦で見せた七色変色星を仕込んだ割物だった。とはいえ割物でもポカ物でもない程度の割の強さの玉で、変色星をゆっくりと落とす。長めの燃焼時間で変色の様子が良くわかる秀逸な星だ。続けざまに打たれる幾色もの星が複雑に綾織られて素晴らしい色空間が描き出されていく。大曲や土浦以上の至近でしかも冬の澄んだ夜空にこれが見られるとは。
 観覧記執筆にあたって昨年の花火の祭典〜新春〜を読み返してみると、今夜は風向きなどがほとんど1年前と同じ様なのだった。違うのは昨年ほどは冷え込んでないことか。ツインリンクホテルから吹く上空北向きの風に、やや東方向の流れも合わさって、オーバルコースを薄く斜めに横切る風だ。パドックレーンでの仕掛けモノの煙や、スターマインの射出煙などは第3ターン方向へ流れていた。
 
第3部 新春の願い(干支玉)
 新春の願い干支玉。辰年から順に最後は今年の干支の卯年玉まで十二支12発の尺玉が披露される新春恒例のプログラム。それぞれの玉には会場で抽選により募集された願い事がアナウンスにより添えられて打ち上がる。これが毎度の事ながらいずれも見事な尺で一発毎に唸ったり、叫んだり、感嘆したりして観ていた。出だしでいきなり小幡花火では珍しい曲導無しに面食らった。ファインダーを通してはどこに玉が昇っているかわからないからだ。適当なところでカンで早めにレリーズするが、ファインダーから眼を離してみると、昇っていく口火が見えていたので位置はわかった。玉名が太陽ということなので曲導付きというのもフォルムとしておかしいだろう、と納得。3発の妙なる四重芯はいずれも見事だったが、私的には昨年の新春でも上がったけれど八重芯花冠にぐっと心に響くものがあった。私はきっとこの玉が好きなんだろう。最後に今年の干支玉の願い事が読み上げられ発射、となるとドドッと数発の曲導がまとめて昇った。現象だけ見れば花束打ちとすぐわかったけど、一瞬添え玉でも付いているのかと一発ずつ上げていくプログラムだけに当惑した。そして卯年の彩色百花園はなんと同じ玉の5発同時打ち。銀芯入りの彩色小花が5発分一斉に開いて、思いがけなさに思わず声が出てしまった。11発に5発一斉。中央の10号筒が16本あったのはこういうことか。これは新春の願いでは一度もやったことがない打ち方なのでなんてありがたい機会なんだろう。
  
第4部 早春譜
 主体となるのは和火モノで、出だしから和火一色。このパートの中盤で10号和火千輪が両端対打ちで入ったが、和火の中に紫の星を散らしてとても気品のあるいい玉だった。設置の確認時に厳しいと察知した状況がまさに来た。打上場所の左右から対打ちで10号炸裂だ。左はもう頭上高くまで達していて楽にフレームアウト。
 しかし酔いしれている場合ではなく、このパートの最後が例の100発一斉だ。だからいつそれが飛び出すか?中盤からはそのことだけに集中する。撮影も最初の方の和火のスターマインだけで、あとは眺めて「その時」が来るのを計らった。100発一斉だけのためのカメラその2のレリーズは左手に。メインの方は右手に用意しタイミングを待つ。カメラ1台は横位置で100発一斉全体を。メインの方は縦位置で真ん中あたりを縦で切り取るような構図にしてあった。一度フェイントに釣られたが、100発一斉の出だしはバッチリとタイミングが合った。しかしながら、うぁぁぁ銀か……トバしたなぁ。銀というのは難しい。それが来ると判っていて、目一杯光学的に絞るとかで撮ることもできるが、それは「見た目の印象」と違ってしまう。肉眼での眩むような白の感じ、で撮るには私的にはトぶかトばないかギリギリの所にしたいわけだけど、何が出るかわからない100発一斉では何が来てもそこそこに写る備えになるから難しい(写真右・横位置で。かろうじてギリギリ。結構高さが出ていた。縦位置でもいけるか)。
 5部に入る前のアナウンス時にレンズは28から24ミリに交換した。つまりここまでは28ミリ1発。最終のフルワイドに備えるわけだ。
 
第5部 越冬 春の訪れを待つ大自然の世界
 越冬、というと銀牡丹一色というような厳冬の銀世界のイメージだが、芯物の2箇所打ちから錦冠に変わり、中核を成したのは椰子だった。合間に挟まる尺の対打ち玉がいいじゃないですか。最大幅での対打ちに撮りの上では敗北感が半端無い。
 そして最後の最後はお約束で椰子と銀冠の5箇所ワイド一斉と後列からの尺打ち込みで締めくくった。ワンカット起用の6×7カメラにも働いて貰いたかったが、手巻き仕様なのでフィナーレの怒濤の展開ではメイン1台にかかりきるで精一杯。
 いい花火だったねぇ……と愛好家諸氏誰からともなく言い交わし会場を後にする。新年早々に勿体ないくらいの内容だった。予算はどうかはわからないけれど、良心的な花火と丁寧な打ち上げを讃えたい。酔いしれ陶然となりながら店じまいし駐車場に向かう。前回同様に仲間共々宇都宮駅まで送り届けていただき、21時前には帰宅した。年明け早々に本当に良い花火を見せていただいたと感謝するばかりだ。 

番外付録編 1/8
東武動物公園 ウインターイルミネーション 4Seasons
  
埼玉県・宮代町


地上50mのフリーフォール
「G-max」からイルミが放射状に降り注ぐ。
三日月をアクセントに

ポジフイルム

ポジフイルム

池を囲む100本のソメイヨシノが
鮮やかな新緑のような、
青々とした光に彩られる。

Milky Way Promenade
(ミルキーウェイプロムナード)
遊歩道の上に100mに渡り天の川を再現

東山魁夷の日本画を連想

イルミネーション越しに
三日月を抜く
    
 6×7判カメラをワンカット起用したのはいいのだが、近場の花火イベントが少なく、車も無いとなるとなかなか近日中に残りのフィルムを花火では消費できない。早く現像したいとは思ってもそこが1カットでも現像できるデジタルカメラとの違い。
 で、近隣のイルミネーションイベントで消費して現像することにした。
 このイベントは2年目らしいがたまたま車内吊り広告で最近見て知った。イルミネーション装飾にはイメージテーマがあるらしく、昨年はファーストシーズンとして「春」をテーマに。2年目となる今年のテーマは「冬にきらめくCoolな夏」ということらしい。開催期間の終わりが近づいていて最終は1月10日と駆け込み観覧になった。
「冴えわたる冬の夜空に、色とりどりの光の粒が、輝く夏の光景を再現します!」とのふれこみである。40万球!のLED?を使い、埼玉県の新たな冬のデートスポットとして、早くも話題になっているということだが………。
 子供が小さかった頃以来、動物園にプールに花火と、ここには何度も来ているが電車で来るのは初めてだ。駅前からゲートまでバスが出ているが乗るほどの距離ではない。このイベントには最寄り駅に近い東ゲート近くで行われている。イルミネーションは17時から20時までで、この間で500円という専用の入場料金になっている。開始の17時前でも入れたので15分前くらいに入場。東ゲートからの一帯は夏の花火イベントで慣れた場所だが、どこがどのようにイルミネートされるかは点って見なければわからないから、ロケハンしようもない。17時になるとなにやらアナウンスがあって一斉点灯。それから左回りに撮影ポイントを探しながら白鳥の池の外周を巡る。初めて見るイベントだからどこが絵になるか?と被写体とアングルを見出すのは楽しい。三脚は1本だけどフイルムとデジタルと両方持参。乗せ換えながら交互に撮る。お客さんもパラパラではあるがそれなりに訪れていた。
 残りフィルム消費はアッという間だった。同時撮影のデジタルカメラと違って露出を変えて同じカットを何枚か抑えなければならならいフィルムはそれだけで消費されていくからだ。それでも結果が直ぐに見られるデジタルカメラをガイドに露光量が決められるのでこうして露出計だけでは計れない対象はありがたい。デジタルの方もマニュアルフォーカスにして、花火と同様にバルブで適当に切っていく。
 小一時間も撮影して夕食前に戻れた。私が最寄りの動物公園駅に帰り着いた時点でもそれからイベントに向かう客が居たくらいで、なかなか人気なのかと考える。デジタルカメラの方の現像では、撮っている時のモニタでもわかっていたことだけれど、ホワイトバランスをいじっても特に緑のLED光が肉眼で見ている時の色に写らない、再現できないことに苦労した。夜景に対するデジタルカメラのオートホワイトバランスは優秀だけれど、相変わらず緑色光に対する映像素子の反応は(花火撮りでも同じで)独特だと思う。もちろん作例では修正してある。
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