花火野郎の観覧日記2011

観覧日記その7 8/12
第24回 那珂湊海上花火大会
  
茨城県・ひたちなか市


ひたちなか海浜鉄道

花火設置図

10号・昇曲導付四重芯変化菊

10号・三重芯引先紫光露
(プログラム記載通り)

スターマイン
光の宝石箱

水中スターマイン2
水上に花咲く幻想の花

10号・変芯錦先変化牡丹
(プログラム記載通り)

スターマイン
夏の夜の夢花火

10号・八重芯引先紅光露
(プログラム記載通り)

水中スターマイン3
水上に咲く光の花園

ワイドスターマイン
港夜景を彩る火の芸術

ワイドスターマイン
港夜景を彩る火の芸術

ワイドスターマイン
港夜景を彩る火の芸術
     
 家に居てもこう暑くては、長い午後はビールを飲んで昼寝してお仕舞い、となんとも怠惰な盆休みになってしまいそう。そこでまぁ近場で12日開催の所、しかもゆっくり出かけられそうな大会を探して昼を過ぎてから出かける。例のひたちなかの音楽イベント会場のすぐ南にある漁港が花火会場。初観覧となった。
 常磐線勝田駅から、震災時の多大なダメージからごく最近復旧したひたちなか海浜鉄道に乗り換える。しかし3セクの鉄道はJRからは冷遇でもされているのか?常磐線車内放送では乗り換え案内をしていたし、勝田駅発と時刻表まで調べてきたのに、駅構内にはひたちなか海浜鉄道への乗り換え案内表記が一切無い。間違えたかと思って駅員に尋ねてしまった。「それなら1番線です」という案内表記は2番線からしか表示していない(1番線は存在していないことに)。
 上野行きスーパーひたち君を発する2番線に寄り添うように、というか端っこを間借りするように3セクのホームがあった(写真を見れば幅狭さが一目瞭然)。スイカ(西瓜じゃない)のタッチパネルがあり1番線はもうJRの管轄外ということだ。ひたちなか海浜鉄道は現金のみ、という。やがて入線したそれはなんと1両編成。鉄道ファンに人気があるらしく入れ替わり立ち替わり車両の写真を撮っているので参加してしまった。
 最寄りの那珂湊駅から会場の漁港まで徒歩10分くらい。驚いたのは「涼しい!」。あぁぁ内陸の海無し県埼玉はなんて暑いんだ。まぁ“暑いぞ熊谷”を抱えているし仕方ないが、海が近くというだけで午後の一番暑い時間に町なかを歩いてもこんな気温が違うとは。
 漁港に着いて15時くらい。うはーっ海から冷たい風が吹いているっ。なんて快適。ここまでは人通りが少なかったが、岸壁沿いに建ち並ぶ海産物市場とか、回転寿司とか定食屋とかはたいへんな賑わいだった。海沿いの駐車場も7割ほど埋まっており、こんなに人が……と驚いた。 
 それから小一時間ロケハンしたが、初見の私には一見して震災による被害は見受けられなかった。人は多いけれど花火見物を見越して場所取りしているような客はほとんど居ない。つまり賑わいの大半は海産物の飲食やお土産が目当てと言うことだ。駐車場の一角から遙か遠くの防波堤上の花火筒が眺められ、手前はすぐ海なので良さそうと思ったが、ちょっと遠いなぁ。駐車場整理係りの人に「初めてなもので」と花火方向などについて聞いてみると、声はかけてみるもので写真を撮るなら……と良い場所を教えてもらったが徒歩ではきついのでまたの機会にしよう。
 大会本部が立ち上がったのも16時をはるかに回っていた。そこでプログラムを入手したが本部前が最短距離で一番近い花火群まで200メートル強の正面、という設置だった。つぶさに検討すると漁港の地形からくる観覧場所の位置と、防波堤の上の花火設置位置が微妙によろしくない感じだ。本部近辺に陣取れば間近に迫力在る観覧ができるだろうが、南東方向の本日の風だと下手。ロケハンを難しくさせたのは、せっかく海に来ているのだから海面が見えるような位置にしたかったのと、大会プログラムに水中投下式の水中花火(水中スターマインと表記)が用意されているからだ。これが楽しみだった。本部などで関係者に聞いてまわり、投下ラインを割り出す。つまりどこから落とし初めてどこで終わるか、投げ込み船の走行ルートを知りたい。それによって水中花火の開花位置と構図を考えるためだ(写真:水中スターマイン1・水中花のじゅうたん)。
 当初、永年のカンでここはいい場所と感じた撮影場所は10号まで450メートルと程良かったが、水中ものの立入禁止区域に入っていたらしく夕刻に退去させられてしまった。まぁ仕方ない。あとで考えるにそこは水中花火投下ラインすぐ脇で迫力というより星が刺さるくらいの位置だった(瀑)。
 夕刻に投下船が予行演習というか投下ラインを実際に走っていた。それを双眼鏡で見ていた私は乗っている関係者と目が合ってしまった。なにやら船上が騒がしい。「あんなところに人が」そんな空気。こりゃ船が発着場所に戻ったら退去させに来るな……と思ったら案の定。
 それで最初に目を付けていた駐車場近くの岸壁に移る。間合いは10号まで800メートルと遠くなるが当初地点と見ている方向は同じ。間合いを詰めようにも直線で200メートル先は海だし選択の余地がない。花火は向かって左の北側から、スターマイン、5号筒、8号、10号と横一列に並んで見える。夕刻に投下船が実際に走ってくれたおかげで明確に走行ラインが掴めた。肝心の水中花火投下ラインはこちらからだと「つ」の字型に左奥から始まり右に進み、手前に左カーブして左前方に来る、という感じなはず。それを見越しての立ち位置。開花が折り返すことで立体的な配置が期待できる。海面への投射が重要だから微妙に位置を調整して、水中花火の下が出来るだけ多く海面になるような位置を選んでいる(場所によっては開花位置が防波堤に隠れる)。鎌倉などで10号までの投下型水中花火に鍛えられた私はこれだけでだいたい絵が思い浮かび自在に撮れる。その鎌倉みたいにババーンと目の前全部が海だと苦労は無いが、ここのように立ち位置で水中花火との絵柄が相当に変わってしまう場所では撮影位置は重要だ。ロケーションを考えてもここではせいぜい4号くらいの玉だと思う。こうした水中花火ではどこからどこまで撮り続けるか。どことどこを撮らないで済ますか?の組み合わせでいろいろ撮れる。構図としては規模に合わせて水平線をどの高さに持ってくるか?が肝心だ。今回は3回あるので1回目を様子見としてもまぁそのいろいろをやってみようか。
 開始を待つばかりという頃、この大会は何度か観ているという地元の愛好家に声を掛けられた。久しぶりの顔合わせになったのでしばし歓談。もしかするとどこかで三脚を構えているかも、そうしたら色々尋ねようと思っていたのだった。それでこの大会や近隣の大会について聞かせて貰ったのでたいへん参考になった。
 と、そこへ大会スタッフがやってきて、海縁から退去しろと要請してきた。やれやれ追い出されてきたのにまた追い出しですか。花火保安距離に入っているならともかく遙かに離れている。理由は震災からみの津波からみ。しかも打上開始の30分前。こうした間際の排除は間尺に合わない。海縁が「津波などで」危険だから、と言うなら朝からずっと岸壁に車で乗り付けて日がな釣り糸を垂れている太公望達の安全はどうでもいいのか?なぜに花火の見物客だけ退ける?退けるなら朝から釣り客を含めて一切立入禁止にすべきだろう?
 だから我々も抵抗する。そうしているうちにもどんどん新しく観客も車も入ってくる。規制するにしても遅すぎだ。結局それから10分もしないうちに「客席として解放することにした」指令が来たらしく、スタッフたちは引き上げていった。つまり退去を言われたその時に素直に従った者たちが割を食ったわけだ。
 プログラムは、5号10発打ち、8号単発、10号単発、スターマイン小中大、水中スターマインの5つをランダムに繰り返す。5〜10号はすべて内容が違っている。担当は地元の野村花火工業。そこは安心の内容が期待された。
 なんとスタートは19時なのに1発目が「四重芯変化菊」。勿体ないと思っていたら、最初の15分くらい来賓の挨拶が延々と続き、結構夜空も暗くなったので良かった。背後の空の下は海。無駄な街灯りもないからすぐに暗くなった。
 その四重芯が見事に決まり、プログラムとスポンサーを読み上げてのんびりと花火が上がるまったりした打上が進む。和むなぁ。今回もデジタル一眼一発。初めての所では守備範囲の広いズームでシームレスな画角変更が可能なデジタルが重宝する。5つのプログラム種によって方向と画角と露出を変え、けっこうそれが忙しい。プログラム紙には全部玉名とタイトルが記載されているのでそれと、間合いに合わせての露光調整を細かくしている。ときたま記載と違う玉が上がるのも一興か……。しかしうーむ。花火以外に写るものが殆どない。いくつかある灯台の灯りだけか。だから海への反映だけが頼りなのだが、スターマイン系もなかなかミニマムで。
 水中花火は計3回。私が各地で観た中では割と大型の船を使っている。ゆっくり目に(船が大きいからか、実際は速い?)走行しながら落としていると感じた。玉は3度とも錦と銀牡丹の派生型の二種類のみのランダムで、やはり最大4号くらいか。大きさは場所によるからともかく、種類を3回で(全部千輪とか、全部色牡丹とか)替えると良さげであるがなぁ……。しかしながら漁港の防波堤の配置とか地形を活かしたここならではのプログラムだ。私も水中モノがあるというので来てみる気になったのだから。5号10発打ちを間引いて、水中スターマインの回数を増やし、玉内容を毎回で変えるとちょっといい名物になるかもだ。なぜなら投下式の水中花火は全国的にもそれほどたくさんやる場所があるわけじゃないからだ。3回の水中モノでは、落とし終わりの位置などを変えて3タイプ撮ってみた。灯台を基準に見るとわかるが、3回目では灯台の手前にまで開花が入り込んでいる。デジタルカメラだからいちいち写りを確認できるからよろしい。プロの私が撮る花火写真には気品がなくてはイカン!と考えている。まぁそこそこイケたかしら。
 ラストだけワイドスターマインの豪華プログラム。途中で「これで終わらないよな……」と感じたら即座に打上列右端(8〜10号)から曲導が昇るのが見えて、大玉を積んできた、と素早く画角を変える。大会本部側だとワイド列の中から打ち上がるように重なって見えるのだろうが、こちらからは横に並んでいる。ラストは全カ所錦冠でさすがに終了感バッチリに締めくくった。
 来賓の挨拶などで遅れたから心配したが、始まってみるとトントンと進み、予定の20時30分より10分ほど早く終了。知り合いに挨拶をして駅に向かう。
 戻りのひたちなか海浜鉄道は花火客を見込んで、一両多く連結されて二両編成となっていたが、それが入線するとホームに居た客全部が余裕で乗れてしまう、それくらいの混雑。地元客は徒歩か車であり電車利用は相当少ないとみた。予定していた最終より1本早い上野行き特急に乗ることが出来た。

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