花火野郎の観覧日記2011

観覧日記その12 10/8
第10回 こうのす花火大会
  
埼玉県・鴻巣市

 午後になってからゆっくり出かける。鴻巣市はほぼ隣の市になるが、電車だといったん大宮駅に出て高崎線回りになるVトラルート。それでも鴻巣駅までトータルで1時間もかからない。駅から最短徒歩ルートで鴻巣西中脇を通って長大な堤防道路に出ると15時前。驚いたのはメイン会場まで2キロメートルはあるその堤防道路の端には、既に延々と場所取りシートが連なっていた。堤防斜面も高さがあって長いので、いくらでも座れるけれど最上段はすっかり場所取り済みだった。そしてシートの隙間を探しながらメイン会場向けに歩く。
 ところどころで既着の愛好家氏に挨拶をしながら、打ち上げ筒設置図と睨めっこ。全長1キロメートルもあるワイド打ちと、迫り来る三尺玉に対しどこから迎え撃てば良いだろう?
 ありがたいことに私が知らなくても、誰か他の愛好家が様々な情報をもたらしてくれる。だから今年の大会の最終プログラムでは1000メートルワイドで10号が設置されることを知っていた。何と言っても「川幅日本一」というこの場所。1キロメートルは楽勝。しかし当初は有料席のあるメイン会場に向けてこれを設置すると考えていた。それが可能な場所だからだ。しかしまたまた誰かが、公式ブログに設置図が載っていると教えてくれたので探してみると。在った。え?
 いやなんともこれは………。北西から南東に向けて地図上では斜めに1000メートル取っている。これではメイン側は思い切りハスじゃないか。しかもワイド10号打ち列はメインから見て三尺の後ろという遠間。これはようするに「筒を立てやすい場所に置いた」のに他ならない。この広大な河川敷、全てが整地されているわけではない。大部分は秘宝が眠っていそうなので探検したくなるような未開のブッシュ地帯。メインに向けて平行に筒場を切り開くには、多大な労苦と費用がかかりそう。それで川に平行に走る既存の農道上で車で入ってそのまま並べられる場所になったと思われる。
 最終プログラムの10箇所の筒場が堤防道路から双眼鏡で確認できた。西中のある辺りからだとほぼワイドに平行して相対しているが、ワイド列が三尺の後ろということもあって三尺筒は中央でなく、向かって左南側に6箇所、北側に4箇所と言う具合。10箇所それぞれの打ち上げサイトには10号筒が30本。計300発の偉容。つまるところ柏崎の10号300連打と同規模だ。これはこれは凄いことになった。
 さてこれをどういうアングルから眺めるかだな。真正面では三尺の迫力はいいけど、ワイドは入りきらない、と写真屋の私は真っ先に画角に収まるか?を考えてしまう。実際にカメラを覗きながら全体が収まる位置までメイン側に歩き、そこそこと思われる場所に三脚を差していく。
 最終的にずいぶんメイン側に近づいた。プログラムを買いに行き、トイレを使うには便利な場所だ。そしてメイン会場一帯を見て驚いた。3年前は17時を回っていたのに場所取りは楽勝だった。それが堤防斜面などは隙間無くシートが敷きこまれているじゃないか。そして打ち上げ方向を見るとさらに仰天した。全部有料席になっているっ!最前列に協賛者席、仕切があってその後ろは有料席と目の前はブルーシートで埋め尽くされていた。かつて有料席部分は一般席でかつ本部席やテントが並んでいたのだが、それも無くメイン会場からの眺めだというのに「花火以外に写るモノが何も無い!(これも写真屋の発想です)」。
 メイン側でもそこに陣取る愛好家達と長らく歓談して過ごした。この大会に地元客が繰り出すのは開始約1時間前から。はたして18時前後から一気に堤防を通る観客が増えて、途切れることなく続く。それでも余裕で飲み込むくらい堤防の観覧場所は広い。
 せっかく昨年90分に縮めてすっきりしたのに、またまたしかも気温が下がる時期に2時間番組の苦行を強いられる拡大版開催に呆れる。しかも18時に既にとっちり暗い時期になのに19時開催にしたあげく、その定刻を5分遅れて始まったのは花火でなく冗長なご挨拶だ。近くを通りがかる女子中学生にすら、「こんな長く話していて予定どおりに終わるのか?」と言われていたくらい。結局入れ替わり立ち替わり15分の長っ話が続いてようやくスタート。挨拶はスタート時刻の前から初めて、花火は90分で終わってはどうだろうか?観客の「早く(花火を)始めてくれ」という空気でチリチリと頬が痛い感じだ。
    

尺玉同時打ち

尺玉同時打ち

尺玉同時打ち

尺玉5発同時打ち(6発入り?)

銀柳大瀑布

スターマイン

スターマイン
starmine_gold.gif
スターマイン
yoeshin.gif
尺玉・四重芯
   
 風向きは予報通り南〜南南東くらいで、メイン側が下。変わっていく予報も出ていたが、そのまま安定して最後まで。私は少し斜めに見ている奥の位置で、最終プログラムまでは全編にわたって煙の影響はほとんどなかった。撮影はほぼ28ミリ1発。尺の同時打ちでは縦、鳳凰では横。それだけだ。2台用意したカメラの一方はズーム装着でスターマイン他を狙っていたが、撮りたい光景が少なくてフイルムがほとんど進まなかった。例年唯一撮影欲が湧くプログラムの尺の同時打ちも、なんだか玉のバリエーションが減った気がする。
 進行は以前に比べれば早いのにテンポよく打ち上げが進んでいる風ではない。昨年は実況のラジオを聴いたが、今日はどちらかというとメイン寄りなのでなんとか進行アナウンスが聞こえる。しかし迷い犬の呼び出し(前代未聞だよっ)だの、迷惑駐車のなんたらとか、ただでさえ協賛者名とそのメッセージをいちいち全部読み上げて恐ろしく時間がかかっているのだから、よけいな放送を挟んでさらに滞らせないで欲しい。
 プログラム誌には打上ごとに出資額が記載されている。スターマインなら一基が10万円というのが一番安いデフォルトか。10万円は出資する側にとっては大金だがスターマインの対価としては残念ながら少なすぎる。故に玉も大きくない、いささか見映えのしない薄味のスターマイン。金額が30万!と書かれると、3倍立派なスターマインだなっと期待すると10万×3基。つまりさっき見たばかりの同じ内容のスターマインが横3列になって焚かれるだけ。こういうのがなぁ……飽きて途中で帰る客を引き留める気にはなれない。こうした安いスターマインはもっと束ねて7号10号が入る立派なスターマインとして組むべきで、その方がお客に喜ばれるに違いない。それによってさらに適切な開催時間に短縮できると思うし、1時間程度に短縮できる内容だと思う。
 全部で66番まである演目はプログラム誌5ページに渡って記載されている。その65番まではつまり薄いスターマイン、7号、10号単発打ち、同時打ち、合同スターマインの繰り返し。それでもプログラム立てはパターン化せずにメリハリをつけようと工夫しているみたいだ。その中で7号〜10号の打ち上げは見栄えはするし使用玉の出来も充分良い物なのは感心する。だから尺玉同時打ちのプログラムを注視していくのが攻略法だろうか。それで難なくラストまでたどり着ける。
 残念なのは「川幅花火」という名の合同スターマイン。この地の最大のウリである「川幅日本一」を表題にしたスターマインが何故にこんな道路の側溝のような貧弱なスケールなのだ。日本一の呼称を自ら下げまくっているではないか。ここは幅を感じさせて欲しいところ。むしろ最後の出し物に、関東一のスターマイン・川幅花火「鳳凰乱舞」と川幅の呼び名はここに持ってくるべできではないのかなぁ?そもそも合同スターマインは金額が大きいのだからもっと見応えのあるものを組めるはずだが?
 飽きるの拷問だのという愛好家の声もあるが、同県内ではこれを凌ぐ拷問も体験しているのでこの程度の責め苦には屈しない。それと気温が低いのがまぁ快適に時を過ごせる故か。昨年はかなり蒸し暑かったせいで時間経過もより長く感じられた。
 これまで観た3回もそうだけど現場での打ち上げミス、配線ミスが多すぎる。尺玉同時打ちで別のスポンサーの尺玉同時打ちが誤って一緒に出てしまう、に始まり、尺玉5発同時打ちがなぜか6発あって別の尺玉同時打ちが1発しかなかったりとか協賛者の顔に泥を塗るミスの多いこと。主催者は人様の協賛金を預かる立場。しかしこうした無駄とミスがあって、次年もお願いしますと言えるのだろうか。
 プログラムを見ればこうした単発打ちにはいちいちメッセージが付いている。中には故人を偲ぶ打ち上げまであるのに、その玉はその時は出ませんで後にある余所の打ち上げに混ざっちゃいました、では浮かばれないではないか。それでいて(個別には頭を下げているのかも知れないが)その場でミスとわかるのだからいちいち申し訳ないとアナウンスする配慮があっても良いと思う。メッセージ付きの協賛を募った以上、花火玉には様々な想いが託されているのだ。それをないがしろにしてはいけないと思う。
 さていよいよ最後のプログラム。関東一のラストスターマイン「鳳凰(おおとり)乱舞」。まさか三尺を混ぜて打たないよな?と儚い望みを抱いていた。「来た!」10箇所から曲導が延びて行く、最初の全箇所は、鳳凰を思わせる翼の形の10号だった。出だしはいいんじゃない?「ほぉーおぉー」と洒落ていたのはここまでで、後は多重芯を含む10号が猛烈なピッチで打たれ始めた。その塗り重ね塗り潰しの速いピッチは違和感だったし、中盤、多重芯が連打されているところでは、打ち上げの凄さじゃなく勿体なさに唖然とした。と、そこへ中央からひときわ太い曲導が昇り、1発目の三尺を放ったことがわかった。「やはり混ぜるのか」。半ば諦めながらその雄大な開花を追いかけるが、盆の途中まで10号の開花が覆い隠す。そして300連打が終わり、風向きの関係もあるけれどメイン会場との間に猛烈な煙が立ちこめるなか、2発目の三尺も打ち上げられた。その盆は煙たなびく空間に霞みながらゆっくり拡がって消えた………。思わず両手が出て拍手喝采してしまうような気分ではなかった。「勿体ないことを……」脱力してつぶやいた。それが感想。勿体なさ比でゆくと、無駄的勿体なさ7割、贅沢的勿体なさ3割といったところか。ともあれこれだけのスケールと物量の設置で初めてながら無事に打ちきったのは素晴らしい。
   
鳳凰乱舞・三尺玉1発目 鳳凰乱舞・三尺玉1発目 鳳凰乱舞・三尺玉2発目 鳳凰乱舞・三尺玉2発目
  
「鳳凰乱舞」は地の利を得た間違いなく名物プログラムに成りうると思う。それは確かだ。観覧場所も充分でありながらこれだけの規模の打ち上げ場所はなかなか無いし、それを最大限活かす設計だと思う。私は自分が住まう同県内にこうしたプログラムが誕生したことを誇らしくさえ思う。しかしそれは打ち方を含めた見せ方を改善すれば、の話だ。要約すれば、最高の舞台と良い役者が揃っているのに演出と台本がそれをまだ活かせていない。
 仕事でも始めての試みの時は こんなのはどうだろう? と提案や試作から入る。たたき台と言っては失礼だが、この舞台でどれだけの凄いことができるか?の試行錯誤は大切と思う、今回の「鳳凰乱舞」が主催者の意向か花火屋の提案か見ている私共には判らないが、ひとつの意欲在る提案と受け止めた。「こんなんでどうだ!」と繰り出されたプログラムは充分賞賛される内容だった。初めての試みだから全て絶賛というわけにはいかない。より良く、完成度を上げて熟成していけばよいのだ。もし、主催者に誉め言葉以外の進言を聞く耳があればの話だが。
 少なくともこの商工会青年部よりも多くの花火大会を観ている者から僭越ながら提案させていただければ「余所の良い大会を視察して学んで欲しい」。主催者は大会を運営する立場として花火への理解をもう少し深めて欲しい。花火玉には製作者の心と魂が宿っている。鳳凰乱舞でのこうした浪費は哀しい。
 まず大玉帝国の新潟の大会、長岡の三尺、フェニックス、柏崎の本家300連発、三尺の同時打ちなど、玉の活かしどころを心得た先駆の花火大会で、尺玉〜三尺玉の効果的な消費の仕方、打ち上げ方法、演出など大玉が活かされた打ち上げとはどういうものかを体験して欲しい。お祭り騒ぎのノリも重要だけれど、この花火大会の良い方向の発展を願うならそれはきっと良い経験になると思う。
 既に視察した上で、何言ってんだ。あんなまどろっこしい打ち上げじゃなく三尺も多重芯もそうでないものもの、混ぜこぜでドバドバ一緒くたに打ち上げる、あの豪快さと贅沢さが斬新で突き抜けているんじゃないか、と仰るならなにも言うことはない。そういう意味で絶賛する意見も感想も多そうだしそれならそれでいい。私は見たくないから来ないだけだ。買った側の論理で、それをどう使おうと勝手じゃないか、というならそれは花火を理解する心がない。敬意がない。良い大会になるためには(そのつもりがあるならば、だが)主催者もまた花火を理解し、敬意を持たなければならないのではなかろうか。
 花火玉はそれぞれに相応しい、効果的な消費をされてこそ初めて真価を発揮すると考える。私のポリシーは旧いかも知れないけれど尺以上の玉にはそれに相応しい見せ方があるというもの。登場の仕方があるというもの。ことに三尺は独立峰。単独で見る者を圧してこそ相応しい。まとめてどさくさに紛れてついでに打ち上げられるものではない。単独で見せてこそ、10号やそこらとは各段に違う発射音、開発音の大きさ、爆発時の空気の振動。威圧するかの大きな盆を感じる事が出来る。その他の玉が連打される中で一緒に上がれば、発射音も開発音も聞こえない。花火の凄さは見た目の大きさでなく音にもあるのに、多くの炸裂音に埋没して本来の迫力がスポイルされてしまった。昨年戦慄するほどの迫力と威圧さえ感じたここの三尺だが、残念ながらこの打ち方では真価を味わえない。以前、関東の別の三尺を持つ大会と比較して、鴻巣の主催者はとても大切に三尺を打ち上げている、と観覧記で賞賛した。しかし2発も持つと余裕なのだろうか。せっかく昨年三尺1発が映える打ち上げを見せたのに(もう1発は地上開花)たちまち無駄打ちに転ずるとは哀しい。少なくとも三尺の一発は、鳳凰乱舞の前に単独で打ち上げる。もしくは終わって充分に煙が掃けるのを待って打ち上げて欲しかった。
 とはいえこうした願望は、他の大会も数多く観てきた私の尺度に過ぎないことも承知している。多くの一般観覧客は住処の近隣の大会が全てだ。だから埼玉県内と絞っても、長岡の三尺やフェニックス、柏崎の300連発に近しい打上を身近に体感できることは素晴らしいことだ。特に西中近辺で、思わずこのワイドを真正面に浴びる格好になった一般客は昨年の私同様に度肝を抜かれ、忘れられない体験になったことと思う。次も同様の設置で同規模にこのプログラムがあるなら、それを最大限に味わうには10号10箇所に正面向きに相対する場所、つまりその西中を中心とした南北7〜800メートルの堤防道路上で見ると良いだろう。中央に三尺玉、視界一杯の10号打ちを体感することができる。ただし観覧のみ。写真やビデオを楽しむ人は幅も高さも入りきらないから、もっと斜めに見る位置がおすすめだ。しかし現在でもこの西中近辺にはかなりの観客が堤防斜面に座って見ているにも関わらず、放送設備や仮設トイレがないので主催者は配慮してほしいところだ。トイレだけのために本部ほどじゃないけれど結構遠くの仮設トイレを使わなければならないからだ。
 私は今回を見て、正直判らなくなってしまった。公式ページや公式ブログを見るに、この主催者・商工会青年部は実に熱意に溢れているようだ。その熱意にほだされて観覧してきたけれど、微妙に違和感を感じている。この熱意が、良質な花火を打ち上げて地元の客ばかりか他府県の客まで呼びこみ満足して帰って貰う、そうした質実ともに町おこしの名物となる花火大会を目差すことに向けられているのか?それとも商工会青年部という内輪の者同士が花火大会運営という年一度のお祭り騒ぎを楽しむことに向けられているのか?だ。前者であって欲しいと願うのだが、なぜそう思うかといえば、肝心の出し物の花火が「鳳凰乱舞」を除いてはこの3年間にほとんど向上してないからだ。むしろ一部の打上では質が低下している。私は最初に見た2009年では合同スターマインは少しは見られる内容と思ったが、今回はとても耐えられない。特に多くの協賛を募った59番のそれはその合算からは到底見合わないほど貧弱だった。一般協賛者は花火の質や価格などわからないから、そんなものかと思うかもしれない。しかし花火好きな私どもから見れば、人様の大切な金を使って花火大会をしているのに、出資金額に見合う花火を提供しているとは思えないのだ。この主催者の熱意とやる気は認めるが、花火に対する理解と敬意に熱意が注がれてないように思える。花火というより人様が苦労して作った製品への心配りだろうか。多くの出資者から、こんな内容ではもう金を出さない、とでも言われないと花火を改善する気にならないのだろうか?
 そもそも主催者は、少なくとも埼玉県を中心に関東近郊の花火大会を視察し、自分たちの理想を叶えてくれる煙火業者を吟味したのだろうか?人様の浄財を使って運営する花火大会に、それなりの花火とそれを委ねられる煙火業者を起用するのは主催者の良心と考える。
 それにしても実際に全部売れたかどうかはわからないけれど、1.8メートル四方のブルーシート席1区画で12,000円というのには驚く。身の程を知らないというか、運営サイドは自分たちのようやく10回に達した発展途上の花火大会の出し物がそれだけのお代を頂戴できる内容と錯覚しているのだろうか。料金だけ大曲や土浦並とは恐れ入る。高価な料金を貰うお席を設けた以上見合うだけのモノを見せる義務がある。今現在は見合っていないのは明らか。鳳凰乱舞は、その有料席からは、遠すぎ、斜めすぎるのだ。そしてそれまでのプログラムは鳳凰のための前座。無料の堤防から見たそれが悶絶するほどワイドで凄かったということは、地元の方がたの噂でアッという間に伝わるだろう。

 最後に愛好家氏から三尺玉の玉名を教えて貰ったので記載しておきたい。『青先緑点滅芯錦冠菊先緑点滅』『錦冠菊先銀乱小割浮模様』(打ち上げ順)。

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