花火野郎の観覧日記2010

観覧日記その7 7/24
市制施行40周年記念 第15回 志木市民納涼花火大会
  
埼玉県・志木市

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二尺・二度咲千輪
    
 私が各地に観覧に出かけた頃は、「有名な大会」とか「メジャーな大会」という概念そのものが無かったから、その後どの大会がたとえば愛好家の必修必見の大会になるのか、ビッグネームと呼ばれるようになるのか、そんなことはそもそも判らなかった。
 ただ少ない情報の中から○○県に○○○○という大きな花火大会があるらしい、ということだけで見分に行っていたのだ。それが素晴らしい内容だったことも、噂だけに倒れたところもたくさんあったわけだ。今でこそ、花火好きならひととおり観て置いて損はないような、メジャーな花火大会という場所も評価もあるていど確立している。それも情報誌やインターネットの普及で花火情報が幅広く流通するようになってからのことだ。
 それぞれの開催地からの自慢話ではなく、誰かが一定のレベルの目でひととおり見て回っての評価をくだすことが出来た結果だと思う。
 そうして全国各地の大会を観てきたけど、足元のつまり地元埼玉県内の大会を観てまわるのが少々おろそかになってしまって、まだまだ未見の場所がたくさんあると反省している。
 愛好家の皆さんの中には、住処の県内の大小の大会を丁寧に見て回ることに多くの時間を割いて、その観覧記や情報発信を地道にされている方も何人か居て、それはとても稀少で大切な活動だと感嘆している。既に有名で当然のように満足できるメジャーな大会ばかりを毎年のように観ること以上に、根気のいる活動ではないだろうか。
 この花火大会に来たわけは、地元の埼玉回帰シリーズをやりたいのと、この大会が財政事情などもあり、市制施行の節目となる5年ごとの開催になっているからだ。今年はその5年に一度市制周年記念大会にあたる。
 なにを奥ゆかしいのか、志木市はネットで主催者による花火情報が盛んになってる現在、交通規制図や会場案内図はあるもののプログラムについては提供していない。埼玉県南地域であることを考えれば、だいたい担当煙火店の予測はつくが、そもそもどれくらいの規模でやるとか、そうした情報も一切無いまま現地入り。なに、昨今は情報が有り余りすぎて、観る前から解ってしまうようなのがつまらないじゃないか。情報については手ぶらで行くのもまた一興。
 自宅からは京浜東北線だの武蔵野線だの4種の路線を乗り継いで志木駅にたどり着く。シャトルバス運行は16時からと遅いので、タクシーで運んで貰うもその走行距離からして徒歩ではかなり厳しいなぁと感じる。市内の店舗などの外にポスターが貼ってあり、それを見て初めて「ああ、二尺もあるのか……」と知ったぐらい。
 現地は広大な荒川河川敷で平らな部分はほとんど水田。その奥の川岸に近いあたりに花火筒が並べられていた。5、7号、10号と単発筒が整列している。二尺筒もまだ建って無かったが、クレーン付きトラックの荷台に積んであるのが見てとれ、そこが打上地点と了解した。
 しかしこの開催場所は花火舞台としては素晴らしいロケーションだ。観覧場所は長い堤防道路とその斜面でこれまた広大なスペース。しかしどこにも日陰をつくる場所が無いようなところだった。不便な場所なので車で入れるかと思ったら、あるのは駐輪場だけで駐車場の用意はまったくないのだった。市民向けとはいえ会場には、徒歩か自転車、路線バス、シャトルバスで来るしかないようだ。
 大会本部でプログラムを貰うと、その構成を観てすぐに担当煙火店がわかる。かつてこの大会と荒川を挟んだ対岸の場所の浦和市(現さいたま市)で三市合同花火大会が開かれていた頃の煙火業社と同じである。今は無くなっている本庄市の花火も担当していた。問題は一社で全部やるのか、三市合同の時のように尺や二尺だけは別の県内業者に依頼するのかどうか。
 行動を機敏にするのと負担を軽くするため、カートではなくカメラザック背負いでカメラも1台のみ。電球が連なる堤防状の適地に三脚を置く。すでに敷物やロープで囲っての場所取りが賑やかである。
 到着時にはなにやら雲行きが怪しかったがその後すっきり青空になった。しかし夕刻、北側の空にはパノラマのように巨大な積乱雲が雷雲状態の金とこ型に発達して4つも並んでいた。その雲の下では大雷雨である。遠くに見えているうちはいいのだが。
 始まってみると花火の背後や、その付近の空が繰り返し稲光で明滅する。距離はあるので問題ないが気分はよくない。
 プログラムは単発打ちとスターマインを一定量できっちり繰り返すもので、中盤とラストに大型のスターマインと二尺打ちが入る。
 やはり1時間半という開催時間を稼ぐために入る何回もの単発打ちがいささか苦痛である。5号くらいになると迫力があるので5〜10号単発はその大きさと音圧で見応えがある。しかし号数が上がるととうぜんながら玉数が少ない。反対に退屈としか感じない3号4号の小玉は数ばかり多い。3号を時間をかけて20も30もぽっつんぽっつん打たれるのを観ていると、花火好きの身としてもその時間をどう過ごせばいいのかと途方に暮れる。単発打ちの間のスターマインは3〜4セット続けてやってもあっという間に終わり、そしてまた長い単発打ちが延々と続く。わかってはいたがこの律儀な繰り返しは私的には辛いものがある。言い換えれば、のんびりとしたペースで進むそういう大会なのだという利点かも知れない。矢継ぎ早にどかどか消費しても、ビールを飲む暇もないじゃないか、と。飲み食いしないでカメラを構えている私が悪い?それはそうかもしれない。
 90分もある大会だが撮りどころがなくてフィルムが進まない。いやそりゃシャッターを切れば写るけど、撮りたいというのとは違う。思わず吸い寄せられて撮ってしまうような魔力のある打上は少ないけれど普通の花火大会。なにより、正攻法でメイン会場の堤防道路に立つと、まず花火以外に一緒に写すモノが何もない。それは凄いことなのかもしれないけども、花火大会なのに露天商ゼロ!。河川敷には一切の店がありません。祭りだ花火だとなれば、何処にでも店を出す露天商がゼロ。禁止なのかさすがに5年に一度なので忘れたのかどうか。だから飲食物は全部外からの持ち込み以外になし。ゆえに前景にこうした花火大会らしいモノを入れることもできず、眼下には真っ暗な水田が広がるのみ。背景のさいたま新都心の夜景も遠くぱっとしない。
 花火のセッティングは、「そこにしか並べられないから仕方ない」のだが、スターマイン大小も3〜10号単発、そして二尺が横一列、つまり堤防道路からは20号の保安距離で他の全てが並んでいることになる。来賓席を起点に考えると、二尺は一番奥になるようになっているが、堤防道路からは全部等距離。つまり二尺の間合いで4号程度までのスターマインを打たれても、全く迫力がないのだ。したがってスターマインはほとんど撮る気にならなかった。 
 誤算といえば河原子の時に出がけにつかんだ最大広角を今回は持ってこなかったことか。まさか二尺がこんなに近く見えるとは。28ミリ縦の画角では下から上まで撮るのは無理だった。目玉プログラムは二尺玉だけといってもいいのだが、一発目二度咲千輪は上にはみ出し、二発目錦冠は(写真右上)最終の錦冠スターマインとともに混ぜて打ってしまった上、強風の中なので盆も崩れ放題と、いずれも撮れなくても惜しげもない開花だった。
 プログラムも後半に進んだところで異変が起きた。風が止まり、ねっとりと蒸し暑くなったと思ったら、今度は真逆の北側から突然に猛烈な強風が吹き始めた。南東からの風で、雷雲を押し上げていたというかブロックしていた格好だったが、この風はヤバい。冷たく湿気た風は北から東寄りに変わり、ついに完全逆風にさえなった。
 花火が飛ばされ、「燃えかすなどに注意して下さい」のアナウンスが流れる。玉殻が広く降灰するようになった。なにより遠くで見えていた稲光が空全体に広がって見えるようになり、相当ヤバい状況だった。
 とにかく強風だった。結局この北寄りの風のまま花火は終わった。終盤は駆け足で消費した。というのも強風になるとともに雷雲が南下して来ていたのだ。携帯で気象レーダーを観るとも開始時に県境より北側にあった雷雲が南下して迫っていた。うわぁヤバい。おそらく主催者も危ない気象情報を得ていたのだろう。
 最後の錦冠の二尺も思い切り盆をかき乱されながら散った。もうこの頃には打ち上げを見るのもどうでもいい状態になっていた。残り20分位の所で帰ろうかと考えたくらいだ。どうせ強風でまともに見ることも撮ることもできないし。花火大会中は結局雨は降らなかったが、結局雨にはやられた。
 この後、急いで片づけてシャトルバスの乗り場に向かうが、既に超長蛇の行列になっていて、いつ乗れるかわからない。とうとうこの行列に付いて消化しているうちに雨が落ちてきた。あちこちに落雷の様子が見て取れて、何時何処に、この行列に落ちても不思議ではないという状況下での戦慄のバス乗車待ち。最大規模で降られなかったのが幸いだが、十分に濡れた。
 過去に三市合同花火大会ではほぼ同じ場所で開催し、ある年に打上半ばで最大規模の雷雨が来て、そのまま中止になったことがある(という話を出すのだから居合わせたのだ)。その時の滝雨に比べれば大した降りではない。結局バスに乗るまで1時間近く行列した。1時間かければ歩いて駅まで楽に行けるが歩く気力がなかった。
 帰路の交通機関も大雨のせいばかりではなく、車両点検だの信号トラブルだの毎度の不始末で乱れまくりで疲れた。

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