新傾向の花火・型物

 打ち上げ花火の(割物〜ポカ物)中には型物と呼ばれるジャンルがあります。これらは花火で、夜空になんらかの形を描き出す物です。最近の例で代表的なのは、ハート(写真右)やスペード、アルファベット等の文字、輪が3つでミッキーマウスなんていうのもあります。型物の基本は二次元的な形態であるということですが、最近は立体的な型物花火も作られるようになりました。
 型物自体の歴史は古く、江戸の昔まだ花火が現在のような明るさも色彩も持っていなかった頃にさかのぼるといわれます。炭火の色だけだったので「形」で色々なバリエーションを作り出そうとしたのが型物の始まりといわれています。
 現在では型物と、いわゆる創作物と呼ばれる花火の垣根はそれほどはっきりしていないようです。少なくとも観る側にとっては、丸く開く菊や牡丹以外の「ちょっと変わった」形のものは、みな「新規な花火」または「型物花火」ととらえてしまいがちです。事実例えば「蝶々(写真下)」や「土星」「麦わら帽子」などは三次元の立体的な花火ですが、それぞれの形に見えるのだから「型物」ではないか、というようにです。これらはどちらかというと「新作物」「創作物」といった範疇なのですが、観る側にとってはそれほど厳密に分けて考える必要もないでしょう。 

これら「なんらかの形になぞらえている」花火には宿命があります。それは「観る角度(向き)によってはその形に見えない」という点です。写真はどちらも7号玉の「昇り曲付彩色蝶」という花火です。蝶という花火は平面ではなく割物のような立体的な形で開きます。向きがきまれば、左のように蝶々のように見えますが、右のように横向きになれば普通の丸く開く花火のようで何の形がよくわかりませんね。自分たちの方を向かなかった時は、別の角度で観ているお客さんにはよく見えているのかもしれません。
 型物の中でも、とくに輪郭線(点)だけで形を表す基本的な型物は、二次元の平面ですから真横から観れば「線」にしか見えません。ですから花火師は特定の方向を向けさせるために、花火玉本体に紐を結びつけ尻尾のようにしたり、色々工夫を重ねてきたといいます。

 新傾向の花火、あるいは新作ものと呼ばれる花火は、「従来の円形に開く花火の形にとらわれない斬新な技術と手法による新しいタイプの花火」というタイプのものです。形態や色彩はもちろんリズム感や立体感の創造性が重要視されるといえましょう。花火師にとっても柔軟なアイデアが求められる分野です。日本の伝統的な丸く開く割物花火は現在技術的には成熟し完成の域に達しています。今後はこれらの伝統を踏まえながらも整った形をあえて壊していく方向で新しい技法がどんどん試みられることでしょう。もちろんこれら新作ものの花火も伝統的な技の上になりたっています。

花火最新動向調査(近年と今後の注目花火)



スター/星

土星またはUFO

たんぽぽの詩

尺玉・輪に蝶

麦わら帽子

時計

アジサイにカタツムリ

蝶の舞

ニコニコ/スマイル

サングラス

舞扇

ドラネコ

正義の味方アンパンマン

ハートとクラブ

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